金 吉晴 (国立精神・神経医療研究センター)
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一般シンポジウム
一般シンポジウム88
複雑性PTSDのもたらした臨床的意義
Sat. Jun 22, 2024 10:45 AM - 12:45 PM B会場 (札幌コンベンションセンター 1F 大ホールA)
司会:金 吉晴(国立精神・神経医療研究センター),原田 誠一(原田メンタルクリニック)
メインコーディネーター:金 吉晴(国立精神・神経医療研究センター)
サブコーディネーター:原田 誠一(原田メンタルクリニック)
オンデマンド配信対象外
複雑性PTSD はICD-11 において始めて登場した概念である。1980 年にDSM—ⅢにPTSD が登場して以来、これがベトナム戦争帰還兵士の症状をモデルに作られたことを踏まえ、児童期虐待、難民、長期のDV 被害などのもたらすトラウマ的影響に対しては別の診断基準が必要ではないかということは、ハーマンらによって何度も主張されてきた。その特徴は感情的不安定、不信感、自己価値の低下などである。この問題はDSM の改定の度に取り上げられたが、独立した診断基準とはならず、DSM-5における認知と気分症状、解離の下位分類においてある程度吸収された。これに対してICD-11 では、すでにICD-10 において難民などを想定した破局的体験後の持続的人格変化という基準が採用されていたことなどを踏まえ、出来事と症状のプロファイル分析の結果などに基づいて、PTSD とはことなる複雑性PTSD の診断基準が採用された。これは実質的にはPTSD の下位分類というべきものであり、ICD-11 のPTSD 診断に自己組織化の障害と呼ばれるDSO 症状が加わったものである。児童期虐待などの持続的反復的トラウマは、体験の定義ではなくリスクの説明であるが、この診断概念が、虐待の長期的影響に関心を寄せる臨床家の関心をひきつけ、DSM—Ⅲで封印された心因的議論を活性化させた。この議論はこれまで必ずしもPTSD 概念に親しんでいなかった臨床家によっても担われているが、この事情は日本だけでは無く、諸外国でも同様であるという。私たちは2 年前に本学会で複雑性PTSD を取り上げたが、その後2 年間、この概念がどのように臨床の中で扱われたのかを検討したい。またDSM—5 においてはトラウマと解離の近接性が明らかであるので、解離との関係についても論じることとしたい。
加藤 知子 (かとうメンタルクリニック)
原田 誠一 (原田メンタルクリニック)
丹羽 まどか, 金 吉晴 (国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所)
岡野 憲一郎1,2 (1.本郷の森診療所, 2.京都大学)