第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム89
実はこんなに使える森田療法

2024年6月22日(土) 10:45 〜 12:45 C会場 (札幌コンベンションセンター 1F 中ホールA)

司会:北西 憲二(森田療法研究所・北西クリニック)
メインコーディネーター:田所 重紀(札幌医科大学医学部神経精神医学講座)

森田療法は100 年以上前にわが国の精神科医・森田正馬によって独自に創始された精神療法であるが、現在でも不安症や強迫症などに対する最前線の治療として活用されているのみならず、うつ病や心身症など、その適応疾患も拡大し続けている。にもかかわらず一般の臨床家にとっては、依然として「絶対臥褥から始まる古臭い入院治療」というイメージが強く、現在の精神科医療に役立つという実感にはほど遠い。その一方で、森田療法の実践や研究に携わる臨床家たちは、森田療法は人間の苦悩全般に関する深い洞察に基づいており、精神科臨床の現場でみられる極めて幅広い問題に活用可能であるという確かな実感をもっている。本シンポジウムでは、森田療法の実践と研究に携わる4 人の臨床家たちが、それぞれの立場から、森田療法の高い実用性と幅広い応用可能性について論じる。田所は、森田療法をメタ心理学的に研究している立場から、その神髄を簡明な理論として明示するとともに、総合病院に勤務する精神科医の立場から、Medically Unexplained Symptoms への応用について論じる。舘野は、森田療法と認知行動療法の比較研究に携わる立場から、認知行動療法を受けた後に再燃したパニック症患者を、外来森田療法によって治療して改善させた症例を検討することにより、両者の相違点について論じる。芦澤は、長年にわたって自由に森田療法を活用してきた精神科医の立場から、慢性疼痛と依存症への応用について、患者および治療者にとっての森田療法的態度という観点から論じる。小笠原は、産業メンタルヘルスに携わる心理士の立場から、労働者個人のみならず組織に対しても活用している実践を紹介する。以上の発表を通じて、真に役立つ精神科医療を実現するための精神療法として、森田療法が極めて有望な存在であることを伝えたい。