第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム9
精神科医療におけるギフテッドの視点

2024年6月20日(木) 10:45 〜 12:45 C会場 (札幌コンベンションセンター 1F 中ホールA)

司会:池澤 聰(国際医療福祉大学三田病院/国立精神・神経医療研究センター/東京大学大学院総合文化研究科),三村 將(慶應義塾大学予防医療センター)
メインコーディネーター:池澤 聰(国際医療福祉大学三田病院/国立精神・神経医療研究センター/東京大学大学院総合文化研究科)
サブコーディネーター:熊﨑 博一(長崎大学医学部精神神経科学教室)

ギフテッドとは「1 つまたは複数の領域において、同じ年齢、経験、環境の人と比べて、より高い水準の能力を発揮している、または発揮する能力を持つ」と定義され、全人口の約3 〜 5% 程度が対象となると想定されている。一般に、IQ などの数値として計測可能な領域である知能で表現されたりすることが多いが、実際には知能以外の創造性、リーダーシップ、音楽や美術といった数値として表すことができない計測困難な領域に異質な素質や能力を持つこともある。さらに、必ずしも
すべての領域で能力が高いわけではなく、個人内の各能力領域間にバラツキが認められ、能力差の大きさが、情動制御の悪さや不安・緊張特性の強さと関連しうる。また、周囲の環境から様々な刺激を繊細かつ強烈に感じとり、激しく反応してしまうOverexcitability( OE; 過度激動、過興奮性)という特徴をあわせ持つことが多い。OE は創意工夫、斬新さ、熟考、真実・理解への探求、関係における敏感さなど高度な情報処理能力を表す一方、衝動性、神経質、五感の敏感さ、感受性の亢進など、自閉症スペクトラム症や注意欠陥多動症といった発達障害の特徴や、気分障害など精神疾患の様相を併せ持つことも多い。これらの特徴によって、社会的・情緒的には問題行動・逸脱行動と判断され、学童期には学校生活・集団活動になじめず、周りの友人からの孤立や不適応などを生じ、成人期には、仕事での正当な評価を受けられず職場で不適応を生じるなど、多大な問題を抱え二次障害としての精神疾患を発症することも少なくない。そこで、日常より臨床・教育の現場で携わる5 名のシンポジストから、ギフテッドに着目する意義、課題について話題提供していただく。総合討論では、指定発言者も交え、ギフテッドの特徴を持つ当事者や家族にとって役に立つと実感できるメンタルヘルス支援の在り方や今後に期待される研究開発の方向性について多角的に議論する。