The 120th Annual Meeting of the Japanese Society of Psychiatry and Neurology

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一般シンポジウム

一般シンポジウム96
認知症の臨床に役立つ神経心理と神経病理:アルツハイマー病とレビー小体病

Sat. Jun 22, 2024 10:45 AM - 12:45 PM P会場 (札幌市産業振興センター 技能訓練棟 3F セミナールーム1)

司会:川勝 忍(福島県立医科大学会津医療センター精神医学講座),橋本 衛(近畿大学医学部精神神経科学教室)
メインコーディネーター:川勝 忍(福島県立医科大学会津医療センター精神医学講座)
サブコーディネーター:橋本 衛(近畿大学医学部精神神経科学教室)

高齢化率の増加により認知症者の治療・介護における精神科医の役割は、今後益々増えてくると思われる。疾患修飾薬の登場により、認知症の正確な診断はますます重要となり、正確な診断に基づいた適切なケアマネージメントが求められる時代になってきている。認知症医療で重要なのは、認知症者の症状を知る家族や介護者の情報であるが、家族や介護者のほとんどは専門家でない為、生じている障害を言葉で説明するのが難しい。例えば、言葉が出にくいのも、迷子になって家に帰れなくなるのも、道具が使えなくなるのも、目の前の人を別な人に間違うのも、家族や介護者にとっては、“ 物忘れ” と感じられ、医療者に物忘れで困っていると訴える。そして、臨床医は、家族や介護者から得られた“ 物忘れ” などの困りごとを詳しく聴取し、認知症者にどのような認知機能障害が起きているのかを類推し、認知症者に対する診察で認知機能障害を明らかにしていく。そこで役立つのが、神経心理学と神経病理学の知識である。神経心理学の知識は、認知機能障害の特徴や重症度などを評価し、診断のみならず、認知機能障害に対する適切なメネ―ジメントの為にも重要である。さらに、神経心理学は脳の機能局在を扱うため、必然的に画像診断にも強くなれる。また、神経病理学の知識は、認知症を引き起こしている原因を知るというだけでなく、脳病理の局在による症候の特徴や、病期の経過における臨床症状の変遷など、こちらも認知症の症候把握や、ケアマネージメントを考える上でも重要である。このように神経心理学と神経病理学は、認知症者の診断・ケアマネージメントにおいて非常に役立つが、どちらもやや敷居が高く感じられているきらいがある。そこで、本シンポジウムでは、認知症の原因として多い、アルツハイマー病とレビー小体病について、神経心理学と神経病理学の知識を認知症の臨床に役立つTips について概説することを目的とする。