第120回日本精神神経学会学術総会

セッション情報

一般シンポジウム

一般シンポジウム97
アルコール依存症の臨床現場を変革する:次世代のアルコール依存症臨床家を育む研修プログラム

2024年6月22日(土) 13:15 〜 15:15 F会場 (札幌コンベンションセンター 1F 107会議室)

司会:齋藤 利和(社会医療法人博友会平岸病院/札幌医科大学),佐久間 寛之(独立行政法人国立病院機構さいがた医療センター)
メインコーディネーター:佐久間 寛之(独立行政法人国立病院機構さいがた医療センター)
サブコーディネーター:齋藤 利和(社会医療法人博友会平岸病院/札幌医科大学)

依存症臨床、とりわけ入院治療は困難場面の連続である。激しい否認や病棟ルールからの逸脱など、医療スタッフの忌避感を招きやすい要素に満ちている。アルコール対策基本法が整備され、行政がアルコール依存症の受け皿を増やそうとしても、こういった要素のため依存症診療の裾野は思うように広がっていない。
さらに近年は発達障害やトラウマを抱えた複雑事例・困難事例の増加など、患者層はさらに変化している。自己治療仮説のクローズアップ、多職種連携の浸透など、依存症の治療構造自体も流れが大きく変わっている。このような中で依存症治療の裾野を広げ、質を改善するには、依存症の臨床教育をアップデートする必要がある。本シンポジウムの目的は、アルコール依存症臨床の変遷と問題点を整理し、依存症治療の未来とはどのようなもので、依存症臨床家にはどのような資質が望まれ、どう教育し創出するかを議論することである。
シンポジストは厚生労働科学研究「アルコール依存症の医療研修プログラムをモデルとした、オンライン研修に対応できる実践的な医療研修プログラムの標準化等を推進するための研究」班員である。同班は困難場面への非対決的な対応、バイオ・サイコ・ソーシャルのバランスの取れた統合的視点と知識、人権への十分な配慮、支援者自身のセルフケアなどを取り入れ、教育工学の専門家、当事者や家族と協働した研修プログラムを作成、現在は実施に向けて整備を進めている。
本シンポジウムでは同班から医師(佐久間、長、齋藤)、精神保健福祉士(岡村)に加え教育工学専門家(杉浦)にも登壇していただき、各立場からの問題提起や提言も含め、依存症臨床家の未来像と、それをどう創出するかを議論する。
教育、研修とは未来の人材を創出する取り組みである。アルコール依存症にとどまらず、精神科全般の現場に立てる実践的な人材創出について、フロアとともに議論を行いたい。