The 120th Annual Meeting of the Japanese Society of Psychiatry and Neurology

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ワークショップ

ワークショップ6
リエゾン精神科医が直面する臨床倫理的課題:周産期メンタルヘルスの現場から

Fri. Jun 21, 2024 1:25 PM - 3:05 PM L会場 (札幌コンベンションセンター 2F 207会議室)

司会:根本 康(さいたま市立病院精神科),竹内 崇(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野リエゾン精神医学・精神腫瘍学担当)
メインコーディネーター:根本 康(さいたま市立病院精神科)
サブコーディネーター:竹内 崇(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野リエゾン精神医学・精神腫瘍学担当)

【事前申込制】オンデマンド配信対象外

統合失調症や認知症などの精神疾患患者が身体疾患に罹患した場合、病識の欠如や否認などによって本人の意思決定能力が損なわれ、医学的に必要とされる治療(例えばがんの根治的手術)を拒否することがある。この場合、身体疾患に対する医療チームは時間的猶予がない中で、患者や家族とコミュニケーションを取りながら、治療選択を決定しなければならず、患者家族の意向と医学的必要性、あるいは強制的な医療などとの間で倫理的葛藤が生じるケースも少なくない。リエゾン精神科医には医療チームから問題解決に向けた援助が要請され、その期待はリエゾン精神科医にも強い倫理的葛藤を生じさせる。このような状況でリエゾン精神科医が行うべきは、患者の精神症状の評価や治療のみならず、直面する葛藤状況を回避することなく医療チームと共有し、患者家族と向き合うための援助である。リエゾン精神科医は自身の逆転移にも目を向け、医療チームの力動にも配慮しながら話し合いを促進させ、医療チームが感じる不安を明確にしていく。最終的には検討すべきポイントが明らかとなり、医療チームが進むべき方向性が定まっていくことが多い。もちろん、医療チームが行った臨床判断が必ずしも正解とは限らず、唯一の正解も存在しない。しかしリエゾン精神科医の働きかけにより潜在的であった倫理的葛藤が浮き彫りになり、医療チームが納得して臨床的決断を下すことが可能となる。
本ワークショップは、コンサルテーション・リエゾン・サービスの極意の共有を目的として日本総合病院精神医学会の専門医制度委員会が毎年行っている。本年は臨床倫理の基本的な考えを確認した上で、周産期メンタルヘルスに関連した1 症例の意思決定支援と倫理的問題について参加者同士でグループワークを行って理解を深める。臨床倫理に興味を持つ先生、これからの精神医療の担い手である若手の先生にも積極的に参加していただきたい。