第51回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会

日本運動器理学療法学会
運動器理学療法評価の再考―運動機能障害を見つけ治療デザインをどのように組み立てるか―

Sat. May 28, 2016 9:30 AM - 11:30 AM 第1会場 (札幌コンベンションセンター 1階 大ホールA)

司会:竹井仁(首都大学東京健康福祉学部理学療法学科), 山崎肇(羊ヶ丘病院リハビリテーション科)

[KS1003-3] 疫学的立場から

対馬栄輝 (弘前大学大学院保健学研究科)

疫学では疫病(流行り病ともいう)の頻度や分布に対して集団の動向を把握し,得られたデータを解析して,その原因と思われる要因を追究する。現在では疫病だけではなく,慢性疾患や健康問題を対象とするケースが増えてきた。
例えば厳密な条件下で行う基礎実験と比較して,多くのバイアスが入りこむ疫学研究で知見を得るためには,より巧妙な研究デザインと慎重なデータの記録・解析・解釈が必須となる。
運動器障害に限った話ではないが,理学療法介入の有効性を判定するための研究デザインは疫学研究デザインに倣うべきである。しかし,理学療法に特有の問題が存在し,それが弊害となって単純に応用できないのも事実である。
現在では,ランダム化比較試験(RCT)による研究デザインが最も信憑性の高い結果を得ると考えられている。しかし,本邦の理学療法の研究で,真のRCTを実現させるのは不可能に近い。ここで留意しておきたいのは,RCTの定義が曖昧な現状では,条件次第でRCTと銘打つことが,とりあえず可能となっている点である。
大きく2つのRCTを達成できない理由がある。1つは割り付けの隠蔽も去ることながら,介入のマスク化が困難なことである。もちろんマスク化のために,各々の群の介入者どうし,非介入者どうしが全く交流できないように隔離する方法はあり得るだろう。2つ目は,ソフトエンドポイントが圧倒的に多いことである。これも機器の開発を待ってハードエンドポイントの評価に努めれば実現可能とも考えられる。しかし,このような統制が,ますます理学療法の臨床介入場面とは大きくかけ離れた研究独自の環境を作り上げてしまう。ここでProspective Randomized Open Blinded-Endpoint(PROBE)法は一つの解決の手掛かりとなりそうである。もちろん,これにも反論意見はあり,有効な解決は為されていないので,得策とはいい切れない。上述の2点を,いかに臨床に近い形で研究へと繋げていくかがカギとなろう。