第51回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会

日本運動器理学療法学会
運動器理学療法評価の再考―運動機能障害を見つけ治療デザインをどのように組み立てるか―

Sat. May 28, 2016 9:30 AM - 11:30 AM 第1会場 (札幌コンベンションセンター 1階 大ホールA)

司会:竹井仁(首都大学東京健康福祉学部理学療法学科), 山崎肇(羊ヶ丘病院リハビリテーション科)

[KS1003-4] 医学的診断と機能判断

亀尾徹 (新潟医療福祉大学大学院理学療法学科)

「運動機能障害を見つけ,治療デザインを組み立てる…」,このシンポジウムのテーマはまさしく理学療法士の意志決定過程であり,クリニカルリーズニングそのものであるとも言えます。
オーストラリアの理学療法士,Mark A. Jonesは,理学療法士が診療中に意志決定すべきポイントを,「Hypothesis Categories」として紹介しています。1995年,雑誌「Manual Therapy」に投稿されたレビューで,理学療法士の場合,診断名もしくは原因組織の同定,損傷組織に対する治療のみに焦点を当てた診断的推論(diagnostic reasoning)では不十分と訴えました。そして臨床上考慮すべきカテゴリーとして,1)症状の原因,2)症状発生のメカニズム,3)関連因子,4)検査/治療における禁忌/注意事項,5)介入/治療方法,6)予後,の6つをあげました。その後,生物心理社会的モデルを踏襲した理学療法の台頭,疼痛科学の飛躍的発展などを受け,現在では以下の8つのカテゴリーへと発展しました。
1.活動/参加の能力と制限
2.患者の考え方,展望
3.病理生物学的メカニズム(治癒メカニズム,疼痛メカニズム)
4.存在する機能障害とその原因構造/組織
5.関連因子(身体的,人間工学的,行動学的,心理的,環境的因子)
6.検査/治療における禁忌/注意事項
7.介入(対応)/治療方法
8.予後
ICFの概念およびモデルが浸透した現在,20年以上経過しても色褪せることなく進化し続け,世界的に受け入れられています。
我々が日常的に行っている評価は,これほど多様な問題を扱っているでしょうか?局所の病理にとらわれ過ぎてはいないでしょうか?クライアントが抱いている「問題」に向き合っているでしょうか?
David Butlerが言う「Big Picture」を,クライアントとともに描くことができる理学療法士をめざして,我々は可及的速やかに大きな変革を遂げる必要があるのかもしれません。