第51回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会

日本運動器理学療法学会
協調からみる関節運動・姿勢の制御と運動器理学療法

Sun. May 29, 2016 1:00 PM - 1:50 PM 第1会場 (札幌コンベンションセンター 1階 大ホールA)

司会:加藤浩(九州看護福祉大学大学院看護福祉学研究科)

[KS1009-1] 協調からみる関節運動・姿勢の制御と運動器理学療法

建内宏重 (京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)

関節運動あるいは姿勢・動作の制御においては,骨や靭帯,腱,筋膜などの受動的要素と神経的に制御された筋収縮による能動的要素が巧みに協調している。能動的要素においても,複数の筋が協調して筋張力を調整している。したがって,運動機能障害を適切に評価・治療するためには,個々の要素の異常だけではなく,要素間の偏りなど協調の異常についても捉える必要がある。本講演では,関節運動および姿勢の制御における“協調”をキーワードとして,運動機能障害の評価・治療に有用な知見を紹介する。
具体的には,関節運動の制御における協調として,(1)関節運動における共同筋間の協調,(2)下肢運動における下肢・体幹筋間の協調,(3)関節運動における筋活動と受動・能動的筋張力の協調について述べる。(1)としては,腸腰筋の機能改善に向けた股関節屈筋群における筋活動バランスに関する研究を紹介する。(2)では,人工股関節全置換術術後患者を例に,股関節運動時の腰部多裂筋の重要性を示唆する研究を示す。(3)では,筋電図と超音波エラストグラフィー機能を併用することで明らかになる,複数の筋間の神経的活動と受動および能動的筋張力の関係性について述べ,新たな評価法としての可能性を示す。
姿勢制御における協調としては,(1)運動連鎖と姿勢制御の協調,(2)荷重支持における受動と能動の協調,(3)骨形態と姿勢制御の協調について述べる。(1)としては,足部からの運動連鎖を例に,姿勢制御の優位性からアライメントを解釈することの必要性を示す。(2)では,腸脛靭帯を例に,外的関節モーメントに抗する受動および能動的支持機構の協調に関する知見を紹介する。(3)では,大腿骨前捻角や変形性股関節症患者の骨形態異常と姿勢アライメントとの関連性について述べ,臨床における評価・治療のポイントについても述べる。本講演が,運動器理学療法の発展の一助となれば幸いである。