第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)
若手研究者(U39)による最先端研究紹介(1)

Sat. May 28, 2016 6:10 PM - 7:10 PM 第1会場 (札幌コンベンションセンター 1階 大ホールA)

司会:石田和人(名古屋大学大学院医学系研究科)

[KS1013-3] 不動に伴う痛覚過敏の発生メカニズムとその治療戦略に関する検討

―ラット足関節不動化モデルに対する振動刺激の効果―

濱上陽平1, 中野治郎2, 坂本淳哉2, 沖田実3 (1.十善会病院リハビリテーション科, 2.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻理学・作業療法学講座理学療法学分野, 3.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻リハビリテーション科学講座運動障害リハビリテーション学分野)

近年,ギプスなどで四肢の一部が不動化されるだけで痛覚過敏が発生することが周知の事実となりつつあり,演者らもこれまでモデル動物を用いた検索を通して,不動に伴う痛覚過敏の発生メカニズムやその治療戦略に関して検討を重ねてきた。具体的には,ラット足関節をギプスで不動化すると,不動2週目から痛覚過敏の発生を認め,これは不動期間に準拠して重度化することが明らかになっている。そして,このことを裏づけるように不動期間が8週におよぶと脊髄後角に分布するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が増加し,中枢性感作の発生が認められた。加えて,このような状態に至ると不動を解除しても痛覚過敏の回復は遅延することも明らかになっており,四肢の一部の不動化は慢性痛に発展するリスクファクターになることが示唆されている。つまり,不動に伴う痛覚過敏を予防・改善できる治療戦略を開発することは重要な課題といえる。先行研究では,不動に伴う痛覚過敏は末梢からの刺激入力の減少がその原因とされていることから,理学療法としては,物理刺激を利用した感覚刺激入力の促通といった方法が考えられ,演者らは脊髄後角の神経細胞の興奮性を抑制する作用を持つとされる振動刺激に着目している。自験例の結果では,不動直後からラットの足部に振動刺激を負荷すると痛覚過敏の発生を軽減できるとともに,後根神経節ならびに脊髄後角におけるCGRPの発現も軽減できることが明らかになっている。つまり,振動刺激の負荷は不動によって惹起される中枢性感作を抑制し,慢性痛への移行を予防できる可能性が示唆されている。しかし,その反面,痛覚過敏が重度化した不動4週後から振動刺激を負荷しても,効果は認められないことから,早期介入が重要であるといえる。
以上,本シンポジウムでは演者らの研究成果を紹介しながら,不動に伴う痛覚過敏の発生メカニズムとその治療戦略について考察する。