第51回日本理学療法学術大会

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日本呼吸理学療法学会

日本呼吸理学療法学会
若手会員のための役立つ症例検討会

Sat. May 28, 2016 9:30 AM - 11:00 AM 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:玉木彰(兵庫医療大学大学院医療科学研究科), 木村雅彦(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科)

[KS1023-2] 栄養障害を伴ったCOPD症例

宮崎慎二郎 (KKR高松病院リハビリテーションセンター)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する呼吸理学療法を中心とした呼吸リハビリテーションは,高いエビデンスレベルをもってその有効性が認められており,慢性呼吸不全者に対して理学療法が果たすべき役割は大きい。
一方で,我々が臨床で出会うCOPD症例においてしばしば問題になるサルコペニアは,狭義では加齢に伴う筋肉量の低下,広義ではすべての原因による筋肉量と筋力の低下と定義される。COPDにおける筋肉量の低下は,運動耐容能の低下のみならず生命予後とも強く関連し,体重減少よりも鋭敏に予後を反映すると言われているため,呼吸困難の軽減や運動耐容能の改善と併せて筋肉量の維持および改善が呼吸理学療法の重要な治療目標となる。そして,この筋肉量の低下に影響を及ぼす因子の一つが栄養障害である。COPDでは安定期においても安静時消費エネルギー量は増大しており代謝亢進状態にある。増大した消費エネルギー量に見合う摂取エネルギー量が確保できない場合,エネルギーアウトバランスとなり栄養障害を生じ,サルコペニアを進行させる。したがって運動療法を行うにあたり,栄養状態の評価は必須であり,栄養障害を伴っている場合は運動負荷量にも考慮した呼吸理学療法を行わなければならない。近年ではCOPDにおける運動療法と栄養療法を組み合わせた介入効果も報告されており,欧州呼吸器学会のステートメントには,低栄養のCOPD患者に対する栄養療法介入は運動療法との組み合わせが最も効果的であると記されている。
今回は,栄養障害を伴ったCOPD症例を提示し,栄養状態の評価方法ならびにCOPDにおいて栄養療法と理学療法をどのように組み合わせるかについて考えていきたい。COPD症例を前にした理学療法士が,ガイドラインに沿って呼吸理学療法を行うが思うように効果が出ない,栄養状態が悪いとは思うが何を評価してどのように介入すればよいか分からない,そのような疑問を解決出来る症例検討会としたい。