第51回日本理学療法学術大会

講演情報

日本呼吸理学療法学会

日本呼吸理学療法学会
神経筋疾患の呼吸管理と理学療法:up-to-date

2016年5月29日(日) 11:50 〜 12:50 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:神津玲(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)

[KS1031-1] 神経筋疾患の呼吸リハビリテーション

石川悠加 (国立病院機構八雲病院)

神経筋疾患に関して,米国の疾病予防管理センター(centers for disease control and prevention;CDC)が作成を推進した「デュシェンヌ型筋ジストロフィーケアの国際ガイドライン」がある。欧米の神経筋疾患患者会(TREAT-NMD)のホームページからダウンロードできる。非侵襲的陽圧換気療法(non-invasive positive pressure ventilation;NPPV)が第一選択とされ,気道確保のため徒手や機械による咳介助が推奨される。同様に,脊髄性筋萎縮症,先天性筋ジストロフィー,先天性ミオパチーのケアの国際ガイドラインや,英国呼吸器学会(BTS)から,「筋力低下のある小児の呼吸マネジメント」ガイドラインも公表された。
また,2013年,AARCから,入院を要する成人・小児(膵嚢胞線維症以外)に対して,気道クリアランス療法のガイドラインが作成された。その中で,神経筋疾患,呼吸筋力低下または咳機能低下の場合には,咳介助を行うよう推奨されている。特に咳のピークフロー(cough peak flow;CPF)が270L/min未満の例に対する咳介助は,強い生理学的な合理性がある。機械による咳介助は,mechanical insufflation-exsufflation(MI-E)である。それ以外の肺理学療法,呼気陽圧療法(Positive expiratory pressure;PEP),肺内パーカッションベンチレータ(Intrapulmonary percussive ventilation;IPV),高頻度胸壁圧迫(High-frequency chest wall compression;HFCWC)は,エビデンスが不十分なため推奨されない。
本邦においても,2014年に「神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーションガイドライン」(日本リハビリテーション医学会),2015年に「NPPVガイドライン」改訂第2版(日本呼吸器学会)が公開され,インターネット(Minds)で閲覧できる。
国内外のガイドラインに基づき,神経筋疾患に専門性の高い呼吸リハビリテーションを実施することより,呼吸苦を軽減しQOLを高めることは,緩和ケアとしても重要である。