第51回日本理学療法学術大会

講演情報

日本呼吸理学療法学会

日本呼吸理学療法学会
神経筋疾患の呼吸管理と理学療法:up-to-date

2016年5月29日(日) 11:50 〜 12:50 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:神津玲(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)

[KS1031-2] 神経筋疾患の呼吸リハビリテーションの実際

三浦利彦 (国立病院機構八雲病院理学療法室)

2014年に「神経筋疾患・脊髄損傷の呼吸リハビリテーションガイドライン」(日本リハビリテーション医学会)が発表された。これらの疾患の呼吸障害は,呼吸筋麻痺,呼吸筋力低下が主な病態となっている。呼吸リハビリテーションが確立しているCOPDでは運動療法が中心となるが,神経筋疾患では異なる病態を配慮した評価と介入が必要になる。また,人工呼吸器からの離脱を目標にした短期間の集中的呼吸管理とは異なり,長期に人工呼吸器を使用しながらも活動性を維持し,誤嚥性肺炎や無気肺などの呼吸器合併症を予防するための呼吸リハビリテーションや環境設定も行う。非侵襲的換気療法(non-invasive positive pressure ventilation;NPPV)と電動車いすなどの支援技術を併用することで,延命効果のみならずQOLも維持できるようになってきた。神経筋疾患の呼吸リハビリテーションの目的は,「気管切開や窒息を回避してQOLを維持しやすいNPPVを有効に使用できるように,肺と胸郭の可動性と弾力を維持し,肺の病的状態を予防すること」である。吸気筋力低下による深呼吸の欠如,胸郭呼吸運動の低下に対しては他動的な深吸気を行い,最大強制吸気量(maximum insufflation capacity;MIC)を維持して微小無気肺を予防する。呼気筋力低下による咳機能低下に対しては,咳のピークフロー(cough peak flow;CPF)を定期的に評価し,徒手や機械による咳介助(mechanical insufflation-exsufflation;MI-E)を使用した気道クリアランスを導入する。咽頭・喉頭機能低下は嚥下障害や咳機能低下の原因にもなる。呼吸や嚥下を考慮した頭頸部や脊柱変形の予防に効果的な姿勢管理,MI-Eによる窒息や痰づまり,誤嚥性肺炎を回避し,安全に経口摂取を継続することも重要となる。長期に人工呼吸器を必要としても可能な限り気管切開や寝たきりを予防し,小児期からの就学や成人移行,社会活動に配慮した呼吸ケアを目指す。