第51回日本理学療法学術大会

講演情報

日本支援工学理学療法学会

日本支援工学理学療法学会
ブレイン・マシン・インターフェイスと理学療法

2016年5月28日(土) 16:30 〜 17:30 第3会場 (札幌コンベンションセンター 1階 中ホール)

司会:松田雅弘(植草学園大学保健医療学部理学療法学科)

[KS1038-1] ブレイン・マシン・インターフェイスと理学療法

牛場潤一 (慶應義塾大学理工学部生命情報学科)

モデル動物やヒトを対象とした神経科学の知見が集積されるにつれ,発達期を過ぎた脳や,組織変性や外傷性損傷を受けた病態脳においても,神経機能を再構成するための可塑性能は依然として残存していることが明らかになった。現在,拘束性運動誘発療法をはじめとした,神経リハビリテーションとよばれるさまざまな手法が開発,運用されるようになったが,その背景で働く脳の可塑性メカニズムを明らかにする科学の必要性は一層必要とされている。メカニズムの解明なしに,新奇手法の有効性と安全性が臨床研究として担保されるだけでは,なぜ不十分なのか?脳のどの部位に作用しているのか(作用点),どのようなタイプの可塑性原理が駆動することで脳機能が変容していくのか(作用素),といったことを明らかにしなければ,介入手法の改善,適用疾患の確定や拡大,介入量や介入時期の最適化,他手法との併用の可否などについて検討が満足におこなえず,本質的な発展がままならないからである。Evidence-Based Medicineは医療行為の運用姿勢として必要な概念であるが,そのこととは別にMechanism-Based Medicineの創出にこだわることは,学問の礎を築き,存在意義を明確にする上で必要な営みといえる。本講演では,私たちがこれまで取り組んできたBrain-Machine Interface(BMI)リハビリテーションの臨床研究事例を紹介しながら,脳の可塑性原理を引き出すための条件や,治療体系を構築する上で必要なレギュラトリーサイエンスの考え方を紹介する。
*本講演の内容の一部は,日本医療研究開発機構(AMED)における「未来医療プロジェクト」「脳科学研究戦略推進プログラム」の助成を受けて実施している。