第51回日本理学療法学術大会

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日本神経理学療法学会

日本神経理学療法学会
運動制御と身体認知を支える脳内身体表現の神経基盤

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第1会場 (札幌コンベンションセンター 1階 大ホールA)

司会:高村浩司(健康科学大学健康科学部理学療法学科)

[KS1050-1] 運動制御と身体認知を支える脳内身体表現の神経基盤

内藤栄一 (情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター)

身体図式は,自己の体位(姿勢)モデルと定義することができ,運動制御や姿勢制御の対象となる脳内の身体表現である。身体図式の形成にとって,四肢の位置変化や動きの情報を提供する固有受容器感覚は本質的であり,この感覚情報は体性感覚領野のみならず,第一次運動野を中心とする運動領野ネットワークで処理されている。このとき運動領野ネットワーク内で生成される潜在的な運動指令は,四肢の位置変化に関する体位モデルの形成に関与し,効率的で素早い四肢のフィードバック制御を可能にしている。
複数の身体部位に由来する皮膚感覚や固有受容器感覚などは,体性感覚領野の階層的情報処理過程を通して頭頂葉感覚連合野において統合され,より統一的な姿勢モデルが構築される。また,大脳左半球の下頭頂葉は身体図式と外部物体とを連合する機能を担い,身体図式の拡張や道具の身体化に関与する。したがって,このような頭頂連合野の働きは,脳内身体表現の適応性や可塑性に大きく貢献している。
一方で,右半球前頭-頭頂ネットワークは,経時的に変化する身体状況をモニターしながら身体図式を更新し,一貫した身体知覚のための重要な機能を担うと想定される。この右半球領域は,さらに自己顔認知などでも優位な働きをするため,このネットワークは身体的自己意識の形成においても重要な働きをすると推測できる。
以上のように,本講演では,ヒト脳における脳内身体表現の神経基盤を解説し,これらが運動制御や身体認知において果たす重要性について解説したい。