第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

日本神経理学療法学会

日本神経理学療法学会
脳卒中片麻痺患者の神経可塑性と歩行

Fri. May 27, 2016 3:20 PM - 5:30 PM 第1会場 (札幌コンベンションセンター 1階 大ホールA)

司会:吉尾雅春(千里リハビリテーション病院セラピー部)

[KS1052-1] 歩行運動の再学習―歩行運動解釈と再学習の理論的背景―

大畑光司 (京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻)

脳卒中後片麻痺患者の歩行を変化させるためには,中枢神経系の可塑的変化を引き起こすことが求められる。日本脳卒中学会の脳卒中ガイドラインには下肢のトレーニング量を増加させることが推奨されており,このため必要なトレーニングの方略は,高強度(高難易度),高頻度,課題特異的であると考えられる。しかし,歩行トレーニングの帰結として,歩行速度が改善したとしても,歩容(歩行パターン)の変化が見られないことが多い。歩行パターンの変化を引き起こすためには運動の再学習が重要な役割を果たす。そのための原則について,我々理学療法士は探索を重ねるべきであろう。
歩行の学習に必要な観点として,1)力学的要件(Biomechanical factor),2)運動感覚(kinesthetic sensory),3)強化と罰則(reward and panishment),の3つが考えられる。ひとつめに,運動学習を行うためには,本来あるべき正しい運動(Normal output)と現在の異常な運動(abnormal output)の差を力学的に評価することが求められる。次にあるべき運動が引き起こす感覚(Normal input)と,異常な運動の引き起こす感覚(abnormal input)の差を経験させ,その運動感覚を基準に運動制御を学習させる必要が有る。最後に非宣言的な運動感覚をより強く記憶するために,適切な強化を与えることによって,運動記憶を強めるべきである。
本シンポジウムでは上述の運動学習の観点を念頭にして,装具療法や徒手的な矯正,さらにロボットリハビリテーションが果たす役割を論述したい。