第51回日本理学療法学術大会

講演情報

日本神経理学療法学会

日本神経理学療法学会
神経難病の理学療法

2016年5月29日(日) 10:40 〜 11:40 第3会場 (札幌コンベンションセンター 1階 中ホール)

司会:神沢信行(甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科)

[KS1056-1] 神経難病の理学療法

望月久 (文京学院大学保健医療技術学部)

ヒトの行動,思考,そして喜怒哀楽の感情もすべて神経系のはたらきの現れであり,神経系の損傷は直接的に私たちが生きることすべてに影響を及ぼします。神経難病は根治的な治療方法がなく,神経系に生じた病変による機能障害が不可避的に進行するため,神経難病の理学療法は廃用性障害の可及的な維持・改善や重症期の身体機能維持などを目的に,どちらかというと消極的な理学療法が実施されてきたように思います。また,パーキンソン病を除くと有病率が人口10万人に対して数名程度と低く,症例の蓄積が難しいために理学療法の体系化が進みにくいという側面もあります。しかし,神経難病のリハビリテーションや理学療法に関わる多くの実践の積み重ねのなかで,神経難病に対する理学療法の考え方や理学療法士が提供できる介入の幅が広がり,より積極的な理学療法が行われるようになってきました。
それらの例として,パーキンソン病に対するLSVT-BIGや感覚集中戦略,脊髄小脳変性症に対する集中リハビリテーション,筋ジストロフィー症やALSに対する強制吸気練習,姿勢保持装置や車椅子・環境制御装置の発展などがあります。
神経難病の理学療法には,進行していく機能低下をどのように補い対象者のADLやQOLを高めていくかという,理学療法士の創造性や発想の転換が求められます。また,神経難病は神経系の部位特異的な老化現象とも考えることができ,高齢者の理学療法にも通じるものがあります。このように神経難病の理学療法には,理学療法士が関わるべき課題の多くが含まれています。
講演では,神経難病の捉え方,神経難病に対する理学療法の基本的な考え方,そして現在の神経難病に対する理学療法の介入事例を紹介し,神経難病の理学療法についての理解を深め,神経難病の理学療法の介入モデルについて検討したいと思っています。