第51回日本理学療法学術大会

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日本心血管理学療法学会

日本心血管理学療法学会
骨格筋の肥大と萎縮の分子生物学的機序

Sat. May 28, 2016 1:00 PM - 1:30 PM 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:松尾善美(武庫川女子大学健康・スポーツ科学部)

[KS1058-1] 骨格筋の肥大と萎縮の分子生物学的機序

絹川真太郎1, 高田真吾1, 沖田孝一2 (1.北海道大学大学院医学研究科, 2.北翔大学大学院)

骨格筋量と筋力は密接に関連しており,いずれも生命予後と関連していることが明らかとされている。健常者においても心不全の様な慢性疾患においてもこのことは示されている。近年,筋力および筋量の低下を特徴とする病態として,サルコペニアが注目されている。サルコペニアの要因は様々であり,しばしば加齢に伴って起こるが,身体不活動,低栄養,内分泌異常なども関わっていると考えられている。筋量を制御する分子機序を明らかにすることは重要な課題であると考えられる。筋量は骨格筋肥大や萎縮によって規定されるが,それは筋原線維の数の増減より,筋細胞のサイズ増減によるところが大きい。骨格筋細胞の肥大は,細胞内において筋原線維を構成するアクチンやミオシンなどのタンパク質の合成が分解を上回ること,あるいは分解が抑制されることによって起こる。骨格筋細胞の萎縮は分解が上回ることによって起こる。したがって,タンパクの分解と合成のバランスが骨格筋筋力・筋量の維持に重要な役割を果している。これらの分子機序は動物研究によって明らかにされてきている。タンパク合成はinsulin-like growth factor 1(IGF-1),Akt,mTORを介した経路が重要であるが,非IGF-1の経路としてmyostatinを介した経路が注目されている。タンパク分解は炎症性サイトカインによって誘導されるubiquitin-proteasome系が重要である。本講演では,骨格筋の肥大と萎縮の分子機序に焦点を当てて概説する。