第51回日本理学療法学術大会

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日本地域理学療法学会

日本地域理学療法学会
地域理学療法における行動変容の視点からの介入戦略

Sun. May 29, 2016 9:30 AM - 10:30 AM 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:牧迫飛雄馬(国立長寿医療センター)

[KS1087-1] 地域理学療法における行動変容の視点からの介入戦略

岡浩一朗 (早稲田大学スポーツ科学学術院)

本発表では,効果的な地域理学療法の推進策について考えるため,運動療法にまつわる行動変容の視点からの介入戦略を検討する際の重要なポイントを明らかにする。
従来の運動療法では,運動アドヒアレンスの低さが大きな問題であった。そのため,脱落者を減らし,運動習慣を獲得させる方策の1つのポイントとして,認知行動療法の積極的な活用が注目されている。これまで運動習慣の形成促進に頻繁に利用されてきた認知行動的技法として,目標設定,セルフ・モニタリング,刺激統制・オペラント強化,逆戻り予防等が挙げられる。また,運動器慢性疼痛の自己管理も運動療法からの脱落を防ぐ重要な方略である。特に,認知的再構成,ディストラクション,リラクセーション,活動ペース配分,快活動の計画等に代表される痛み対処スキルトレーニングの有用性が示されている。以上のような認知行動療法を運動療法と上手く組み合わせた介入戦略を考えていくことが,対象者の自発的な行動変容を促す上で重要である。
また,これまでの運動療法は,身体活動量を増加させること(運動の習慣化)のみに焦点を当てる場合が多かったが,近年,長時間座位行動(座りすぎ)の健康リスクが注目されるようになってきた。座位行動と種々の健康アウトカムとの関連について検討した前向きコホート研究のシステマティックレビューやメタアナリシスによると,座りすぎが肥満,体重増加,2型糖尿病,一部のがん,冠動脈疾患発症,総死亡などのリスクと関連があることが示されている。また,高齢者を対象にした研究では,認知機能や歩行速度の低下等との関連も報告されるようになった。重要なのは,これらの関連が身体活動・運動の実施とは独立して認められることである。そのため,運動療法を行う上での2つめのポイントとして,これまで重視してきた身体活動・運動の促進に加えて,座位行動を減らすことに焦点を当てた取り組みが必要である。