第51回日本理学療法学術大会

講演情報

日本糖尿病理学療法学会

日本糖尿病理学療法学会
糖尿病患者の筋機能と糖代謝

2016年5月27日(金) 11:50 〜 12:50 第3会場 (札幌コンベンションセンター 1階 中ホール)

司会:石黒友康(健康科学大学健康科学部理学療法学科)

[KS1089-1] 糖尿病患者の筋機能と糖代謝

植木浩二郎1,2 (1.東京大学大学院医学系研究科分子糖尿病科学講座, 2.国立国際医療研究センター糖尿病研究センター)

我が国をはじめとする東アジア諸国では人口構造の急激な高齢化が進行しており,それに伴って加齢関連疾患である糖尿病や動脈硬化性疾患,さらにはがんなどが増加しているとも考えられる。中でも,加齢によって骨格筋量が低下するサルコペニアは,種々の疾患の原因となっているのではないかと想定されるようになってきており,実際心血管イベントをはじめとしたいくつかの疾患では独立した危険因子であることが示されている。骨格筋は,ヒトでは末梢のグルコースの70%以上を処理する臓器であるとも言われており,その量の減少は肥満の有無にかかわらずインスリン作用の低下=インスリン抵抗性をもたらすものと考えられる。サルコペニアでは,速筋を中心に年率数%ずつ骨格筋量が減少すると言われており,上記のインスリン作用の低下の他にも,身体活動量の低下や骨格筋が分泌する種々のマイオカインの変化などによって,様々な疾患の誘因となっていると考えられる。サルコペニアの原因は,廃用性変化やインスリン・IGF-1作用の低下,あるいは骨格筋での炎症の増加などが言われているが,その詳細は明らかではない。したがって,その予防についても必ずしも確立した方法があるわけではないが,速筋を強化するレジスタンス運動の励行や適切な蛋白量の摂取が効果があると言われている。一方で,運動によって骨格筋から分泌されるマイオカインが,褐色脂肪細胞様のエネルギー産生細胞(Beige/Brite cell)を増加させ肥満を防止したり,直接的に糖脂質代謝を改善したりする可能性も動物実験から示唆されている。超高齢社会を迎える我が国にとって,どのような運動・食事がサルコペニアを予防し糖尿病を予防・改善するのかを検証し,またBeige/Brite cellや糖代謝を調節するマイオカインを同定して,治療に応用することが重要であると考えられる