第51回日本理学療法学術大会

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日本糖尿病理学療法学会

日本糖尿病理学療法学会
分子生物学的観点から糖尿病患者の筋機能の可能性を探る

Fri. May 27, 2016 1:00 PM - 3:10 PM 第3会場 (札幌コンベンションセンター 1階 中ホール)

座長:野村卓生(関西福祉科学大学保健医療学部リハビリテーション学科), 井垣誠(公立豊岡病院日高医療センターリハビリテーション技術科)

[KS1094-2] 糖尿病における筋機能異常

沖田孝一1, 高田真吾2, 横田卓2, 絹川真太郎2 (1.北翔大学大学院生涯スポーツ学研究科, 2.北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学)

1.糖尿病における運動耐容能低下と筋機能異常
有酸素運動,レジスタンス運動に関わらず,運動により糖代謝が改善されることはよく知られており,運動を掌る骨格筋は,人体最大の組織であり,糖代謝において極めて重要な役割を果たしている。インスリン抵抗性を示す患者および2型糖尿病患者では運動耐容能が低下しており,運動耐容能の低下が心血管リスクさらには予後の独立した予測因子になることが報告されている。しかしながら,長期に経過して合併症を併発すれば,運動耐容能に悪影響を及ぼすのは当然であるが,インスリン抵抗性そのものが運動耐容能を低下させるメカニズムについては未だ明らかではない。
我々は,インスリン抵抗性を基盤とするメタボリック症候群患者において,運動耐容能,骨格筋内エネルギー代謝,筋細胞内脂肪蓄積および酸化ストレスを測定し,患者群では,運動能力が低下しており,骨格筋内エネルギー代謝に障害がみられ,筋細胞内脂肪増加していること,さらにそれらが相互に関連していること,また,酸化ストレスがこれらの病態に密接に関連していることを明らかにした。
2.糖尿病における筋機能異常の治療
臨床研究:糖尿病治療薬の一つであるピオグリタゾンは,核内転写因子であるPPARγ作用薬であり,骨格筋ミトコンドリア機能や脂肪酸酸化に関わる遺伝子発現を誘導することが知られている。我々は,メタボリック症候群患者において,ピオグリタゾンが,糖代謝のみならず,運動耐容能,骨格筋内エネルギー代謝および筋細胞内脂肪を改善することを明らかにした。
基礎研究:高脂肪食によるII型糖尿病モデルマウスでは,骨格筋線維型が遅筋から速筋へシフトし,骨格筋ミトコンドリア機能障害が生じ,運動能力が低下する。これまでに我々は,これらの異常が,Nox活性阻害剤・アポサイニン,ピオグリタゾン,アンギオテンシン受容体拮抗薬などにより改善することを明らかした。