[KS1096-1] 糖尿病足病変におけるリハビリテーションの意義
今世界の糖尿病患者は4億人を突破し,さらに予測を超える早さで増加している。糖尿病足病変も増加し,これにより20秒に1本下肢を失っていると報告されている。それは本邦においても同じであり,患者の増加と共に下肢切断も増加しており外傷を抜いて下肢大切断の原因の1位となった。またその後の5年生存率は約40%(透析患者は約20%)と胃癌や大腸癌より悪い。それは切断によるADLの低下が循環器のイベント(脳梗塞,心筋梗塞など)を起こすからである。そこで糖尿病足病変に対して大切断ではなく,踵を残し歩行機能を残そうという「救肢」の取り組みが始まっている。大切断に至る糖尿病足病変の85%は足潰瘍が先行するため,これを治癒できれば大切断を免れることができるからである。しかし,「救肢」は簡単ではない。そもそも糖尿病性足病変とは神経障害や末梢血流障害を有する糖尿病性患者の下肢に生じる感染,潰瘍,深部組織の破壊性病変のことである。糖尿病や末梢血流障害など内科的な治療と切開や小切断,植皮など創閉鎖手術,さらに血管拡張術やバイパス手術など治療に必要な手技や知識は広範に渡りかつ専門性も高く,単一診療科では担えない。つまり,チーム医療が必要な疾患である。そのため地域や施設によって担う診療科が異なり,特異性が強く表れている。また糖尿病足病変は,趾や趾間などの足部末梢や踵,1,5中足基節関節など荷重部に発症し,足の構造を破壊するために,治療には免荷が必要であり,長期に渡れば歩行練習は必須となる。さらに歩行や再発予防のために免荷装具も必要となり,理学療法士だけでなく義肢装具士も含んだ多職種のチーム医療が必要となる。当院創傷ケアセンターにおける救肢の取り組みの実際を紹介し,糖尿病足病変治療における理学療法士の役割の重要性について報告する。