第51回日本理学療法学術大会

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日本予防理学療法学会

日本予防理学療法学会
フレイル・サルコペニアの概念と対策

Fri. May 27, 2016 11:55 AM - 12:55 PM 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:大渕修一(東京都老人総合研究所介護予防研究対策室)

[KS1098-1] フレイル・サルコペニアの概念と対策

荒井秀典 (国立長寿医療研究センター)

現在わが国の高齢者人口は26%を超えており,約10年後の2025年には75歳以上の後期高齢者が2000万人を超えると推定されている。このような人口構成の変化を示すわが国においては,健康寿命の延伸こそが諸問題の解決のためのポイントとなる。そのためには加齢に伴う変化を可逆的なものと非可逆的なものに分けた対応が必要となる。加齢に伴い,臓器機能が徐々に低下し,生理的な予備能が減少する。特に後期高齢者においては生理的予備能の衰えにより,外的なストレスに対する脆弱性が高まり,感染症,手術,事故を契機として生活機能が低下することが増えてくる。このように,加齢とともに環境因子に対する脆弱性が高まった状態が「フレイル」であるが,もともと虚弱と訳されていた概念である。フレイルは,健常な状態と要介護状態の間に位置し,介入可能な病態であることから高齢者の健康増進を考える上で重要な概念である。その評価には基本チェックリストなどの様々評価指標があり,介入に関しても運動・栄養療法が中心となる。さらに,フレイルの原因として重要なのがサルコペニアである。サルコペニアは加齢とともに骨格筋量が減少し,筋力,歩行速度が低下する老年症候群であるが,サルコペニアの治療に関しても推奨される治療法は栄養及び運動療法である。フレイル,サルコペニアともに,低ビタミンD血症,低タンパク食がリスクとなるため,ビタミンDの補充及び高タンパク食が推奨される。また,運動についてはレジスタンス運動と有酸素運動を組み合わせることが推奨される。栄養,運動によりサルコペニアから脱却できれば,フレイルからの脱却も可能となる。フレイル,サルコペニアはしばしば自覚症状を伴わないため,早期診断と早期からの介入が必要である。