第51回日本理学療法学術大会

講演情報

日本予防理学療法学会

日本予防理学療法学会
予防理学療法で再発に歯止めがかけられるか?

2016年5月27日(金) 13:05 〜 15:05 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:藤田博暁(埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科), 吉田剛(高崎健康福祉大学保健医療学部理学療法学科)

[KS1100-2] 心血管疾患患者における再発予防と課題

神谷健太郎 (北里大学病院リハビリテーション部)

慢性心不全や冠動脈疾患に対する運動療法は,日本循環器学会,ヨーロッパ心臓病学会,アメリカ心臓協会における診断および治療のガイドラインにおいて,治療推奨度Class I(エビデンスから通常適応され,常に容認される)に位置づけられている。
その効果として,心不全においては,4,740名を対象に含む33の無作為化比較対象試験のメタ解析で,運動療法は,すべての原因による再入院を25%,心不全による再入院を39%低下させ,14,486名の冠動脈疾患患者を含むメタ解析においても,心血管死亡を26%,再入院を18%減少させることが明らかとなっている。
上記のように,ガイドラインやエビデンスで運動療法が心血管疾患の重要な治療であることが示されているにも関わらず,日常臨床への普及率は低い。循環器疾患は国民の医療費に占める割合がもっとも多いが,リハビリテーション料の算定割合では,運動器39%,脳血管30%に対し,心大血管疾患は3%にとどまっている。エビデンスの確立された心臓リハビリテーションの更なる普及が必要と考えられる。
一方で,心臓リハビリテーションの日常臨床に目を向けてみると,上記のメタ解析で対象とならなかった高齢のフレイル・サルコペニア患者がすでに対象患者の主体となりつつある。これらの対象患者に対する介入においては,老年医学系の運動介入試験の知見を生かして取り組む必要があると感じている。
本シンポジウムでは,心血管疾患患者に対する予防活動の最近の知見をご紹介するとともに,本分野において理学療法士がこれから取り組むべき課題について,ともに考える機会としたい。