第51回日本理学療法学術大会

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日本予防理学療法学会

日本予防理学療法学会
予防理学療法で再発に歯止めがかけられるか?

Fri. May 27, 2016 1:05 PM - 3:05 PM 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:藤田博暁(埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科), 吉田剛(高崎健康福祉大学保健医療学部理学療法学科)

[KS1100-3] 脳卒中の再発予防

渡辺学 (北里大学メディカルセンター)

脳卒中の再発予防は個人の健康生活や社会的負担の軽減のために重要な施策である。再発率は久山町研究のデータによると1年で約10%,10年で約50%と決して低くない。再発予防には原因となる病気の治療,生活習慣の改善,薬物療法の必要性が提唱されており,2014年にStrokeで発表されたアメリカ心臓協会(AHA)によるガイドラインでは,血圧やコレステロール,体重のコントロール,週3-4回の中程度の強度の運動を行うことが推奨されている。
脳卒中は脳血管障害を起源に生じる症状の総称であり,再発予防は脳血管におけるイベント再発を防ぐことにある。運動は動脈硬化の予防や血圧の低下,耐糖能の改善と血管機能の改善に効果があることが知られていることから,適切な運動を行うことが新たな脳血管障害を引き起すのを防ぐには有効であるといえる。
一方,脳卒中を脳の神経機能障害が引き起こす様々な健康喪失の状態と定義するならば,新たな発症を経ずとも理学療法により回復した身体機能や精神機能が再び低下してしまうことも広い意味で脳卒中の再発として捉えることができよう。これには,脳卒中後の不活発や運動制限,生理学的栄養状態の低下によるサルコぺニア,摂食嚥下機能障害による栄養障害,認知活動の低下による認知症の発生や進行などが含まれる。なかでも骨格筋については理学療法により喪失を防ぐものとしてより注目すべき対象である。最近の知見では,骨格筋の保護が脳卒中後の機能予後を保証し,運動が筋量の減少と死亡率増加を予防することが報告されている(Scherbakov, 2013)。筋組織の代謝を促進し骨格筋の喪失を防ぐことも,良好な生命予後の維持と健康寿命の延伸を施し,広義で脳卒中再発を防ぐ有効な手段であるといえよう。
本学会のシンポジウムでは脳卒中後のサルコペニアのメカニズムと研究知見の紹介を中心に理学療法による再発予防の可能性を提起したい。