第51回日本理学療法学術大会

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日本予防理学療法学会

日本予防理学療法学会
新たな健康寿命延伸産業の創出

Sat. May 28, 2016 5:40 PM - 6:40 PM 第2会場 (札幌コンベンションセンター 1階 特別会議場)

司会:浦辺幸夫(広島大学大学院医歯薬保健学研究院), 古名丈人(札幌医科大学保健医療学部理学療法学科)

[KS1105-1] 高齢化社会への対応―生涯現役社会の構築を目指して―

江崎禎英 (経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課)

経済が豊かになり誰もが健康で長生きすることを望めば,社会は必然的に高齢化する。「超高齢社会」は,我々が望んだ結果であり,成果でもある。「高齢化対策」を声高に叫ぶことは,あたかも歳を取るのが悪いことであるかの如き印象を与え,お年寄りの方々に肩身の狭い思いをさせるだけでなく,政策の方向性を誤らせる可能性がある。
我が国の社会保障制度は,戦後復興・経済成長期に基本設計がなされており,「国民皆保険制度」は,結核に代表される感染症が死因の上位を占めていた時代に整備されたもの。その後,経済成長に裏打ちされた社会保障の拡充や国民皆保険に支えられた先進的な医療技術の導入・普及は,結果的に,自立して生活できない虚弱なお年寄りを大量に生み出すことになった。
取り組むべきは,「社会保障制度」の見直しに止まらず,人口構造の変化を踏まえて「社会経済システム」そのものの見直しを行うこと。超高齢社会にとって必要なことは,誰もがそれぞれの年齢や体力に応じて社会の一員としての役割を果たすことが出来る「生涯現役社会」を構築すること。その結果として,社会保障費の適正化が図られ,新たな産業や雇用が創出されることになる。
生涯「現役」としてゆるやかに社会に関わり続けられるよう,地域の経済活動と一体となって社会参加を促す仕組みを構築することで,これまでコストであった部分が資源に変わる。年齢が進むにしたがって,健康や日常生活を維持するために必要なサービスも多様化するため,こうした「健康需要」に対応するためのサービス(公的保険外の健康サービス)を創出し,地域資源を活用しながらそれぞれの地域の実情にあった供給体制を整えていくことが重要である。
これら一連の取り組みを通じて,高齢化社会のあるべき社会経済システムを再構築し,新たな産業群を育成することが,時代の転換期にある我が国社会の課題である。