日本理学療法教育学会
経験からの学びを促す人材育成

[KS1115-1] 経験からの学びを促す人材育成

^○松尾睦 (北海道大学大学院経済学研究科)

本講演では，経験学習の観点から人材育成のあり方について説明する。
熟達論，経験学習論，認知心理学，キャリア論に関する過去の研究を整理すると，「経験から学ぶ力」は，次の5つの要素から構成される。すなわち，1）難易度の高い新しい課題に取り組む力（ストレッチ），2）経験を振り返り，そこから教訓を引き出す力（リフレクション），3）課題に関心を抱き，面白さを見つけ出す力（エンジョイメント），4）自身の成長とともに，他者への奉仕や貢献を重視する仕事上の信念（思い），および5）発達を促す他者との関係性（つながり）である。
優れた育成力を持つOJT（オン・ザ・ジョブ・トレーニング）担当者の特性を明らかにするために，日本企業22社に対して実施した質問紙調査によれば，教え上手の担当者は，後輩や部下の「経験から学ぶ力」を高めていることが明らかになった。具体的には，彼らは，①部下や後輩の目標をうまくストレッチし，②進捗確認・相談の仕方を工夫し，③内省（振り返り）を支援し，④ポジティブな形でフィードバックする傾向にあった。つまり，育て上手のOJT担当者は，「ストレッチ」「リフレクション」「エンジョイメント」という要素を刺激することで，人材の成長を促しているのである。
本講演では，このほかに，職場の学びを促すリフレクションのあり方についても説明する。