第51回日本理学療法学術大会

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精神・心理領域理学療法部門

精神・心理領域理学療法部門
精神医学と理学療法学の架け橋―精神障害に対する運動療法の効果

Sun. May 29, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第3会場 (札幌コンベンションセンター 1階 中ホール)

司会:仙波浩幸(豊橋創造大学保健医療学部理学療法学科)

[KS1122-1] 精神医学と理学療法学の架け橋―精神障害に対する運動療法の効果

池田官司 (北海道文教大学人間科学部作業療法学科)

精神医学および精神保健の領域に理学療法士が関わることへの期待が高まっている。理学療法の直接的な目的は運動機能の回復にあり運動療法や物理療法が主な手法であるため,これまでは身体的疾患による機能低下に関わることが多かった印象を持つ。しかし,理学療法の最終的な目標は単に運動機能の改善だけではなくその人の生活の質の向上である。つまり,理学療法は直接的にせよ間接的にせよ,対象者の心理社会的な機能の向上をもたらす力を持っている。
理学療法と心理・精神領域との関連には2つの側面があると考えられる。
1つは,運動機能のリハビリテーションが必要とされ,そのために理学療法が処方された対象者の心理的側面への配慮に関することである。精神障害を合併している場合には,よりきめ細かい気遣いが求められるかもしれない。精神障害により活動性が著しく低下したことによる廃用症候群への対応,脳血管障害や神経疾患を持つ対象者への理学療法の過程でさまざまな精神症状が出現する場合,障害受容など精神障害とするレベルではない一般的な心理的側面への配慮などが含まれるであろう。
もう1つは,精神障害の予防や症状の改善に理学療法的なアプローチを用いて,精神障害の症状を治療の標的とすることである。理学療法的の中でも運動療法の効果について知見が集積されつつある。運動が,身体への効果だけではなく心の健康にも効果的なことはこれまでに指摘されてきた。認知症発症リスクの低下,認知症の攻撃的行動の軽減,うつ病の再発防止,うつ気分の改善,不安障害の症状軽減,アルコール使用障害の気分や健康感の改善,不眠に対する効果などが報告されている。本講演ではさまざまな精神障害に対する運動療法の効果についてのエビデンスの展望を行い,この領域のさらなる発展に寄与できればと考える。