第51回日本理学療法学術大会

講演情報

理学療法管理部門

理学療法管理部門
医療安全の最新動向―WHO患者安全カリキュラムガイドとノンテクニカルスキル

2016年5月29日(日) 11:50 〜 12:50 第1会場 (札幌コンベンションセンター 1階 大ホールA)

司会:縄井清志(つくば国際大学医療保健学部理学療法学科)

[KS1129-1] 医療安全の最新動向―WHO患者安全カリキュラムガイドとノンテクニカルスキル

相馬孝博 (千葉大学医学部附属病院医療安全管理部)

一般的に個人がある業務を遂行する場合のスキル(技能)は,その業務に直結した専門的知識や技術(Technical Skill)と,それ以外のノンテクニカルスキル(Non-Technical Skill)に大別できる。後者では,コミュニケーション能力が良く例に挙げられるが,各個人の認知スキル・社会性スキル・自己管理スキルなどを包含した概念である。どの産業においても,その領域に特化した専門技術があるが,ノンテクニカルスキルは,こうした専門技術を下支えする共通のスキルである。
さてWHO(世界保健機関)は,2011年にすべての医療系学生のための標準的教科書として「患者安全カリキュラムガイド多職種版」を公開した。日本語訳は,2012年秋から東京医科大学医学教育学ホームページから無料ダウンロードが可能となっている。具体的には,1:患者安全とは,2:ヒューマンファクターズの患者安全における重要性,3:システムの複雑さが患者管理へ影響することを理解する,4:有能なチームプレーヤーであること,5:エラーに学び 患者を害から守る,6:臨床におけるリスクの理解とマネジメント,7:品質改善の手法を用いて医療を改善する,8:患者や介護者と協働する,9:感染の予防と管理,10:患者安全と侵襲的処置,11:投薬の安全性を改善する,という医療者必須の知識と技能が11トピックにまとめられている。本ガイドでは,すべての医療職は学生のうちから,組織の一員として「互いに連携して」勤務することが最重要の課題として作成されている。
医療事故は,最後に見える個人の失敗が注目されやすいが,事故は単一の原因で起こることは少なく,多くの人間が直接的間接的に関わっている。すなわち医療安全上の問題のほとんどは,ノンテクニカルスキルの問題であることが判明してきており,WHOガイドでもこうした知見を元に,医療安全分野の体系化を図っている。本講演では,世界的に標準化が進む医療安全分野を概観し,最新の情報を提供したい。