第51回日本理学療法学術大会

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特別講演

特別講演1
理学療法士のアイデンティティ―実学としての理学療法科学の観点から―

Fri. May 27, 2016 10:50 AM - 11:40 AM 第1会場 (札幌コンベンションセンター 1階 大ホールA)

司会:小川克巳(日本理学療法士協会)

[KS1134-1] 理学療法士のアイデンティティ―実学としての理学療法科学の観点から―

奈良勲 (金城大学大学院リハビリテーション学研究科)

日本の理学療法の草創期前には,理学療法学教育を受けていない理学療法従事者によって実施されていた。1963年に初の理学療法学教育が開始され,1965年に「理学療法士及び作業療法士法」が制定され,1966年に第1回国家試験が行われ,同年に日本理学療法士協会(以下,協会)が創立された。一定の基準を満たす理学療法従事者には期間限定の国家試験受験が認可された。
草創期には主に欧米の理学療法が導入され,教員も外国から招聘されていた。協会は,先進国の理学療法水準に至ることを強く意識してきたが,医師を含む他の医療従事者や国民の理学療法に関する認知度は極めて低く,理学療法士自身のアイデンティティ,IDENTITY(以下,ID)は希薄であった。
IDとは(自己同一性),“自己・理学療法士とは何者か”,“いかなる方法で,何を成すのか”を認知して実践する水準で定まる。また,理学療法の本質やリハビリテーションとの相違点と共通点とを明確にすることも理学療法士のIDの基盤になると考える。
演者は,米国の大学で理学療法学を専攻したが,当初は理学療法士としての明確なIDを抱いてはいなかった。日本で仕事を始めて種々の病院見学,学術大会参加,論文などに触れて感じたことは,“果たして理学療法の学問体系は構築されているのか?”,“科学としての理学療法は確立されているのか?”などの疑問であった。
演者は,帰国後まもなく協会理事を16年,協会長を14年務めた。その間公私ともに,組織としての日本理学療法士協会のIDの確立にも努めてきた。その中で特に理学療法学教育の大学・大学院化,生涯学習・専門領域,学術研究団体としての承認,国際学術大会の開催など,マスタ―プランのキーワードを「プロフェッションの構築」として一貫した『実学としての理学療法体系』の確立に傾注してきた。それらの成果は,本大会の開催形態・12の分科会の実現に繋がり,同時に理学療法士(学)のIDの確立にも寄与していると考える。