第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本糖尿病理学療法学会 一般演題口述
(糖尿病)01

2016年5月27日(金) 16:00 〜 17:00 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:横地正裕(医療法人三仁会あさひ病院 リハビリテーション科), 古川順光(首都大学東京 健康福祉学部理学療法学科)

[O-DM-01-2] 糖尿病患者の坐位行動―誘発因子の特定と経時的運動習慣への影響―

池永千寿子, 黒山荘太, 後藤圭, 野原栄 (製鉄記念八幡病院)

キーワード:座位行動, 2型糖尿病, 運動習慣

【目的】現代社会では,移動や職場,自宅などの生活場面において長時間の座位行動が蔓延しており,糖尿病発症リスクや全死亡との関連が示されている。座位行動は,中高強度の身体活動量とは別の概念として捉えられ,糖尿病の運動指導では,座位行動を少なくし,身体活動量を増やすための評価と指導が求められている。しかし日本人を対象とした座位行動の研究は十分ではなく,糖尿病運動療法と座位行動との関係の検証も不十分である。そこで①日本人糖尿病患者の座位行動の因子を特定し,②座位行動が糖尿病教育入院後の運動習慣の発現(1ヶ月後)と継続(6ヶ月後)に影響するかどうか調査した。

【方法】対象は2010年4月~2014年4月に糖尿病教育入院され,理学療法士が運動療法教育を担当した2型糖尿病患者のうち,退院6カ月後までの追跡が可能で,追跡期間中重篤な合併症の発症などで運動療法適応外となった患者を除く219名(男性93名,58.8±11.8歳,BMI 26.2±4.7kg/m2,推定罹患期間7.0±7.4年)を解析した。評価項目は,坐位行動を国際標準化身体活動質問票(IPAQ short version)と問診で入院時に詳細に聴取した。運動習慣は,運動療法の定義は「週3回以上,1回20分以上または週150分以上」の実施とし,退院後1ヶ月後。6ヶ月後に聴取した。解析方法は,IBMSPSSver.18.0を用いて多重共線性に配慮し①坐位時間を従属変数として,基本情報[年齢(歳)・性別]・糖尿病関連指標[糖尿病推定罹患期間(年)・合併症・食事摂取量(単位)・Body Mass Index・細小合併症(有,無)・大血管症(有,無)]・併存症(有無)[高血圧・脂質異常症],生活環境[配偶者(男,女)・同居家族(人)・職業(有無)・睡眠時間(時間)],内因[身体活動量(Mets・h)・運動好嫌・移動手段(車,公共交通機関,自転車,徒歩)・運動時疼痛]のデータを収集し重回帰分析を行った。②1ヶ月後・6ヶ月後の運動習慣の有無を従属変数に,基本情報・糖尿病関連指標・併存症・生活環境・内因を独立変数として2項ロジスティック回帰分析を行った。

【結果】糖尿病患者の平均坐位時間は7.9±2.7時間だった。①座位行動は,運動が好き(標準化係数β=-0.30,t=-4.65),罹病期間(標準化係数β=0.23,t=3.62),身体活動量(標準化係数β=-0.13,t=-2.10),[R2=0.20]が有意な説明変数として選択された。②1ヶ月後運動習慣には座位行動(OR=0.64),男性(OR=4.22),運動器疾患(OR=0.25)(P<0.05)が選択された。6ヶ月後運動習慣には座位行動(OR=0.48),運動が好き(OR=3.08),年齢(OR=0.97)(P<0.05)が選択された。

【結論】日本人の平均座位行動は約7時間に対し,やや延長していた。「罹病期間が長い」ことから糖尿病に伴う合併症・併存症の影響が示唆される。「運動が好き」「身体活動量が多い」から身体活動と座位行動の関連を示した。また,座位行動が多い患者は,運動療法の発現と維持が難しい可能性を示し,座位行動の短縮するためのアプローチの必要性を示唆する。