[O-DM-01-6] 高齢入院慢性腎臓病患者の身体機能の実態
キーワード:慢性腎臓病, 高齢者, 身体機能
【はじめに,目的】
外来通院中の慢性腎臓病(CKD)患者の身体機能は,透析を導入する前の保存期の段階よりすでに低下している(平木ら,2013)。また,先行研究にて我々は,CKDステージの進行した外来保存期CKD患者の身体機能は,同性同年代の健常者と比較して10~20%低下していることを報告した(音部ら,2015)。入院しているCKD患者の身体機能や日常生活動作能力は,疾患自体や廃用症候群などの影響により,独歩で通院している外来CKD患者に比して,さらに低下している可能性があるが,そのような報告は極めて少ない。本研究の目的は,高齢入院CKD患者の身体機能の実態について明らかにすることである。
【方法】
対象は,当施設腎臓・高血圧内科に入院し,退院時に身体機能評価を実施した65歳以上の保存期および透析期CKD患者53例[維持血液透析(HD)患者および腹膜透析(PD)患者13例]である。中枢神経疾患および運動器疾患を有する患者,評価内容の理解が困難な患者および待機手術の予定入院患者は除外した。
患者背景として,年齢,性別,在院日数,入院理由,糖尿病の有無,推算糸球体濾過量(eGFR)を診療録より後方視的に調査した。
身体機能指標は,下肢筋力として等尺性膝伸展筋力体重比を,歩行能力の指標として最大歩行速度および歩行自立度を評価した。本研究で我々は,歩行自立度の指標として機能的自立度評価法(FIM)を用い,FIM7点および6点を歩行自立,5点以下を歩行非自立と定義した。
まず,全症例の患者背景および身体機能を検討した。次に,対象を保存期CKD患者とHDおよびPD患者の2群に分け,患者背景および身体機能の比較を行った。統計学的手法は,T検定,Mann-WhitneyのU検定およびχ2検定を用いた。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
全症例の平均年齢は80.9±6.4歳,男性28例,在院日数25.4±21.0日,糖尿病患者25例,eGFR22.0±27.9mL/min/1.73m2であった。身体機能は,等尺性膝伸展筋力体重比0.30±0.10kgf/kg,最大歩行速度1.1±0.3m/秒,歩行自立患者24例そして非自立患者29例であった。2群間の比較では,保存期CKD群,HD・PD群の順に,年齢82.1vs77.3歳(p<0.05),在院日数16.5vs38.0日(p<0.01),eGFR20.5vs7.2mL/min/1.73m2(p<0.01)であり有意差を認めた。一方両群の身体機能は,保存期CKD群,HD・PD群の順に,等尺性膝伸展筋力体重比0.30vs0.30kgf/kg(p=0.97),最大歩行速度1.04vs1.21m/秒(p=0.08),歩行自立患者16例,8例(p=0.21)であり,2群間に有意差は認めなかった。
【結論】
入院している高齢のCKD患者の身体機能は外来保存期CKD患者に比して,著明に低下しており,これらは先行研究(笠原ら,2005)で示されている,高齢入院慢性心不全患者の値と同等であった。また,入院している保存期CKD患者とHD・PD患者の身体機能に差はなく,入院イベントがCKDステージ以上に身体機能に悪影響を及ぼしている可能性が示唆された。
外来通院中の慢性腎臓病(CKD)患者の身体機能は,透析を導入する前の保存期の段階よりすでに低下している(平木ら,2013)。また,先行研究にて我々は,CKDステージの進行した外来保存期CKD患者の身体機能は,同性同年代の健常者と比較して10~20%低下していることを報告した(音部ら,2015)。入院しているCKD患者の身体機能や日常生活動作能力は,疾患自体や廃用症候群などの影響により,独歩で通院している外来CKD患者に比して,さらに低下している可能性があるが,そのような報告は極めて少ない。本研究の目的は,高齢入院CKD患者の身体機能の実態について明らかにすることである。
【方法】
対象は,当施設腎臓・高血圧内科に入院し,退院時に身体機能評価を実施した65歳以上の保存期および透析期CKD患者53例[維持血液透析(HD)患者および腹膜透析(PD)患者13例]である。中枢神経疾患および運動器疾患を有する患者,評価内容の理解が困難な患者および待機手術の予定入院患者は除外した。
患者背景として,年齢,性別,在院日数,入院理由,糖尿病の有無,推算糸球体濾過量(eGFR)を診療録より後方視的に調査した。
身体機能指標は,下肢筋力として等尺性膝伸展筋力体重比を,歩行能力の指標として最大歩行速度および歩行自立度を評価した。本研究で我々は,歩行自立度の指標として機能的自立度評価法(FIM)を用い,FIM7点および6点を歩行自立,5点以下を歩行非自立と定義した。
まず,全症例の患者背景および身体機能を検討した。次に,対象を保存期CKD患者とHDおよびPD患者の2群に分け,患者背景および身体機能の比較を行った。統計学的手法は,T検定,Mann-WhitneyのU検定およびχ2検定を用いた。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
全症例の平均年齢は80.9±6.4歳,男性28例,在院日数25.4±21.0日,糖尿病患者25例,eGFR22.0±27.9mL/min/1.73m2であった。身体機能は,等尺性膝伸展筋力体重比0.30±0.10kgf/kg,最大歩行速度1.1±0.3m/秒,歩行自立患者24例そして非自立患者29例であった。2群間の比較では,保存期CKD群,HD・PD群の順に,年齢82.1vs77.3歳(p<0.05),在院日数16.5vs38.0日(p<0.01),eGFR20.5vs7.2mL/min/1.73m2(p<0.01)であり有意差を認めた。一方両群の身体機能は,保存期CKD群,HD・PD群の順に,等尺性膝伸展筋力体重比0.30vs0.30kgf/kg(p=0.97),最大歩行速度1.04vs1.21m/秒(p=0.08),歩行自立患者16例,8例(p=0.21)であり,2群間に有意差は認めなかった。
【結論】
入院している高齢のCKD患者の身体機能は外来保存期CKD患者に比して,著明に低下しており,これらは先行研究(笠原ら,2005)で示されている,高齢入院慢性心不全患者の値と同等であった。また,入院している保存期CKD患者とHD・PD患者の身体機能に差はなく,入院イベントがCKDステージ以上に身体機能に悪影響を及ぼしている可能性が示唆された。