[O-DM-02-4] 糖尿病多発神経障害に関与する要因とは
Keywords:糖尿病多発神経障害, ロジスティック回帰分析, 後方歩行
【目的】
糖尿病(diabetes mellitus;DM)によって腎症,網膜症,神経障害(diabetic peripheral neuropathy;DN)の三大合併症を呈する。DM患者の約50%がDNを発症し,その中でも発生頻度の多い糖尿病多発神経障害(diabetic polyneuropathy;DP)は身体機能に影響する。我が国では,「糖尿病性神経障害を考える会」が作成したDPの診断基準が普及している。DPにより身体機能は低下するため,DM患者に対してDPと身体機能の評価は重要である。本研究ではDPに関与する要因を検討した。
【方法】
対象はDM教育入院をした男性59例と女性32例のDM患者91例(1型5例,2型86例)とした。年齢は61.5±15.0歳(最小22歳-最大88歳),身長は160.5±10.0cm,体重は66.0±17.7kg,BMIは25.5±5.6kg/m2,HbA1cは8.8±2.1%,eGFRは79.4±24.7mL/min/1.73m2,罹病期間は9.1±10.1年であった(平均±標準偏差)。
身体機能について,歩行能力は前方および後方10m歩行速度,静的立位バランスは開眼片脚立位保持(one leg standing;OLS)時間,動的バランスはTimed Up & Go Test(TUG),下肢筋力は30秒椅子立ち上がりテスト(30-sec chair-stand test;CS-30),形態は下腿周囲長(calf circumference;CC)を測定した。DPの有無は「糖尿病多発神経障害の簡易診断基準」を用いた。
統計処理は,DPの有無により群を分け,対応のないt検定を行った。二項ロジスティック回帰分析(変数減数法:尤度比)は従属変数をDPの有無とし,独立変数はHbA1c,eGFR,年齢,前方歩行速度,後方歩行速度,OLS,TUG,CS-30,CCとした。回帰分析のモデルの適合度にはHosmer& Lemeshow検定を用いて判定した。事前に各独立変数間での多重共線性の影響を考慮し,Pearsonの積率相関係数を確認した。抽出された項目のROC曲線からカットオフ値を算出した。統計ソフトはSPSS.ver.20を使用した。なお有意水準はすべて5%とした。
【結果】
DP有り群はDP無し群と比較して有意にeGFRは低値,年齢は高齢,罹病期間が長かった。身体機能については,DP有り群はDP無し群と比較して有意にOLS時間と握力とCS-30が低値であり,CCは委縮,前方および後方歩行速度は遅延していた。各項目間の相関はr=0.80未満であった。二項ロジスティック回帰分析より,CC(オッズ比0.865)と後方歩行速度(オッズ比0.049)が算出された。カットオフ値はCCが33.8cm(感度0.74,特異度0.66,AUC0.74),後方歩行速度が0.91m/s(感度0.80,特異度0.74,AUC0.80)であった。
DPにより運動神経が障害されCCの委縮を認め,さらに歩行障害をきたしたと考えられる。歩行能力の中でも後方歩行が抽出された。後方歩行は進行方向を注視できないため足底接地のフィードバックと平衡バランスをつかさどる前庭機能が重要となる。
本研究より,DPにより身体機能が低下することを前提に捉え,糖尿病理学療法を実施する上でDPと関連がある後方歩行やCCの評価が重要である。
糖尿病(diabetes mellitus;DM)によって腎症,網膜症,神経障害(diabetic peripheral neuropathy;DN)の三大合併症を呈する。DM患者の約50%がDNを発症し,その中でも発生頻度の多い糖尿病多発神経障害(diabetic polyneuropathy;DP)は身体機能に影響する。我が国では,「糖尿病性神経障害を考える会」が作成したDPの診断基準が普及している。DPにより身体機能は低下するため,DM患者に対してDPと身体機能の評価は重要である。本研究ではDPに関与する要因を検討した。
【方法】
対象はDM教育入院をした男性59例と女性32例のDM患者91例(1型5例,2型86例)とした。年齢は61.5±15.0歳(最小22歳-最大88歳),身長は160.5±10.0cm,体重は66.0±17.7kg,BMIは25.5±5.6kg/m2,HbA1cは8.8±2.1%,eGFRは79.4±24.7mL/min/1.73m2,罹病期間は9.1±10.1年であった(平均±標準偏差)。
身体機能について,歩行能力は前方および後方10m歩行速度,静的立位バランスは開眼片脚立位保持(one leg standing;OLS)時間,動的バランスはTimed Up & Go Test(TUG),下肢筋力は30秒椅子立ち上がりテスト(30-sec chair-stand test;CS-30),形態は下腿周囲長(calf circumference;CC)を測定した。DPの有無は「糖尿病多発神経障害の簡易診断基準」を用いた。
統計処理は,DPの有無により群を分け,対応のないt検定を行った。二項ロジスティック回帰分析(変数減数法:尤度比)は従属変数をDPの有無とし,独立変数はHbA1c,eGFR,年齢,前方歩行速度,後方歩行速度,OLS,TUG,CS-30,CCとした。回帰分析のモデルの適合度にはHosmer& Lemeshow検定を用いて判定した。事前に各独立変数間での多重共線性の影響を考慮し,Pearsonの積率相関係数を確認した。抽出された項目のROC曲線からカットオフ値を算出した。統計ソフトはSPSS.ver.20を使用した。なお有意水準はすべて5%とした。
【結果】
DP有り群はDP無し群と比較して有意にeGFRは低値,年齢は高齢,罹病期間が長かった。身体機能については,DP有り群はDP無し群と比較して有意にOLS時間と握力とCS-30が低値であり,CCは委縮,前方および後方歩行速度は遅延していた。各項目間の相関はr=0.80未満であった。二項ロジスティック回帰分析より,CC(オッズ比0.865)と後方歩行速度(オッズ比0.049)が算出された。カットオフ値はCCが33.8cm(感度0.74,特異度0.66,AUC0.74),後方歩行速度が0.91m/s(感度0.80,特異度0.74,AUC0.80)であった。
DPにより運動神経が障害されCCの委縮を認め,さらに歩行障害をきたしたと考えられる。歩行能力の中でも後方歩行が抽出された。後方歩行は進行方向を注視できないため足底接地のフィードバックと平衡バランスをつかさどる前庭機能が重要となる。
本研究より,DPにより身体機能が低下することを前提に捉え,糖尿病理学療法を実施する上でDPと関連がある後方歩行やCCの評価が重要である。