第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本糖尿病理学療法学会 一般演題口述
(糖尿病)03

Fri. May 27, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:小山昭人(市立札幌病院 リハビリテーション科), 田仲勝一(香川大学医学部附属病院 リハビリテーション部)

[O-DM-03-2] 造血幹細胞移植患者の運動耐容能に影響する因子の検討

中村和司1, 松永佑哉1, 高木寛人1, 中山靖唯1, 佐藤貴彦2, 高坂久美子3, 山本英樹1,4, 洪淑貴1,4, 井上英則4, 小澤幸泰2, 宮村耕一2 (1.名古屋第一赤十字病院リハビリテーション科, 2.名古屋第一赤十字病院血液内科, 3.名古屋第一赤十字病院造血細胞移植センター, 4.名古屋第一赤十字病院整形外科)

Keywords:造血幹細胞移植, 運動耐容能, 影響因子

【はじめに,目的】造血幹細胞移植治療の進歩に伴い生存率は向上してきている。当院では近年,再発後の移植やHLA半合致移植,高年齢層の移植が増加傾向にある。この背景から廃用症候群の進行予防,退院後のADLの早期向上が求められる。我々は移植後60日の運動耐容能の影響因子を移植前後から検討し具体的な数値を算出することである。

【方法】2012年9月から2015年6月までに同種造血幹細胞移植を施行した患者のうち移植前後の評価可能であった73例を対象とした。対象者の内訳は,男性41例/女性32例,年齢中央値42歳(16~68歳),疾患は急性白血病(骨髄性30例/リンパ性19例),慢性骨髄性白血病1例,骨髄異形成症候群16例,非ホジキンリンパ腫5例,顆粒球肉腫1例,原発性骨髄繊維症1例 で移植ソースは血縁16例/非血縁57例,骨髄43例/末梢血12例/臍帯血12例/HLA半合致6例であった。基本属性の項目は年齢,性別,前処置,疾患リスク,HLA抗原,HCT-CI(点),移植前左室駆出率(%)・肺活量(%)・1秒率(%),生着日数(日),移植前・移植後30日の血清アルブミン値(g/dL)・血清ヘモグロビン値(g/dL),移植後30日までの理学療法実施日に対して20分以上可能であった理学療法実施率(%)とした。筋力評価では移植前と移植後30日の股関節外転筋力・膝関節伸展筋力を徒手筋力測定器ミュータスF-1(アニマ社製)を用いて加藤らの方法にて測定した。筋力値は左右各2回測定し平均値を体重で除した値(kgf/kg)とした。運動耐容能評価としては6分間歩行距離を測定し身長(m)で除した値を歩行距離(m)とした。統計処理は移植後60日の6分間歩行距離が移植前と比較し維持かつ大西らの報告に基づき基準値以上群(以下:維持群)と低下ないし基準値未満群(以下:低下群)の2群に群分けした。統計解析は2群間で基本属性,筋力値,6分間歩行距離をχ2乗検定,対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定を行い,有意差を認めた因子についてさらにロジスティック回帰分析を行った。いずれも有意水準は5%未満とした。またロジスティック回帰分析にて抽出された因子についてROC曲線を用いてカットオフ値を求めた。

【結果】性別,肺活量,HCT-CI,理学療法実施率,移植後30日の6分間歩行で有意差を認めた。ロジスティック回帰分析にて肺活量と移植後30日の6分間歩行距離が抽出された。ROC曲線よりカットオフ値は肺活量107.4%(感度81.6%,特異度63.6%,正診率64.4%),移植後30日の6分間歩行距離264.21m(感度94.7%,特異度40.9%,正診率63.3%)であった。

【結論】造血幹細胞移植患者における退院前の移植後60日の運動耐容能に繋がる影響因子は移植前の肺活量が重要であり,目安は107.4%であった。同様に移植後30日の6分間歩行距離も重要であり,目安は264.21mであった。今後,肺活量向上を意識した練習や移植後30日までにおける運動耐容能維持の重要性と具体的な数値目標が確認できた。