[O-DM-03-3] 緩和ケア病棟におけるリハビリテーション実施患者の離床能力と予後予測スコアの関係
Keywords:離床, 予後予測, 緩和ケア
【はじめに,目的】
緩和ケア病棟におけるリハビリテーション(以下リハ)の介入目的は,患者やその家族のQOL向上であり,体力が低下する身体状況の中でも患者の希望に沿って,痛みの軽減や自立支援,外出外泊実現に向けた離床耐久性の向上や環境調整などを実施している。患者の希望は,「自宅で整理をしたい」や「思い出の場所に行ってみたい」など,外出を実現する事により叶うものが多い。外出を可能とするには少なくとも移動時間中離床しなければならず,リハでは離床耐久性を向上させるべくアプローチを行っている。しかしどのような時期まで離床可能であるかの指標を示す研究は少ない。今回の研究の目的は,緩和ケア病棟に入院し,リハを実施した患者の予後予測スコア(PPI:Palliative Prognostic Index;点数が高いほど生命予後が短い)と離床可能時間(以下離床能力)の関係を調べ,さらにPPI値を使って離床できるかできないかの参考値を検討することとした。
【方法】
研究は後方視的に実施。対象は緩和ケア病棟(16床)に入院し,2014年10月から2015年3月までの間にリハを開始した患者36名うち,転院や自宅退院となった6名,2015年7月現在もリハ継続中の2名,データ欠損例4名の計12名を除く24名とした。診療録やカンファレンス記録を基に年齢,性別,疾患名,リハ期間,患者の週毎のPPI値,その時の離床能力を調べた。PPI値と離床能力の評価頻度はリハ介入初期,死亡退院前1週から最大8週の週1回ずつとした。統計ソフトはSPSSを使用。PPI値と離床能力の相関関係をSpearmanの順位相関係数を用いて算出し,ROC曲線を用いて離床能力とPPI値の感度,特異度,ROC曲線下面積(AUC)を求め,PPI値の離床能力に関するカットオフ値を推定した。有意水準は1%未満とした。
【結果】
対象者は男性8名,女性16名と女性のほうが多かった。リハ開始時の平均年齢は76.0±10.8歳,平均FIMは64.1±25.5点,平均リハ期間は71.0±53.2日であった。24名のPPI値と離床能力について延べ148週分を収集した。離床能力とPPI値には負の相関を認め,相関係数は-0.67であった。ROC曲線にてカットオフ値を推定した結果,PPI値3.75以上で60分以上の離床が困難(感度79.2%,特異度73.8%,AUC0.82)となり,PPI値4.75以上で30分以上の離床困難(感度82.4%,特異度75.3%,AUC0.83),PPI値6.75以上で離床自体が困難(感度80%,特異度78.6%,AUC0.89)という結果であった。
【結論】
予後予測スコアであるPPI値はADL能力(PPS値)と食思,浮腫・呼吸困難感・せん妄の有無といった身体状況によって評価する予後予測スコアであり,離床の可否は身体状況により制限されることが多いため負の相関関係を示したと考える。結果より離床能力はその時のPPI値を測定することにより離床の可否もしくはどのくらい可能か予測することができ,リハを実施していく上で一つのゴール設定上の判断材料となると考えられる。
緩和ケア病棟におけるリハビリテーション(以下リハ)の介入目的は,患者やその家族のQOL向上であり,体力が低下する身体状況の中でも患者の希望に沿って,痛みの軽減や自立支援,外出外泊実現に向けた離床耐久性の向上や環境調整などを実施している。患者の希望は,「自宅で整理をしたい」や「思い出の場所に行ってみたい」など,外出を実現する事により叶うものが多い。外出を可能とするには少なくとも移動時間中離床しなければならず,リハでは離床耐久性を向上させるべくアプローチを行っている。しかしどのような時期まで離床可能であるかの指標を示す研究は少ない。今回の研究の目的は,緩和ケア病棟に入院し,リハを実施した患者の予後予測スコア(PPI:Palliative Prognostic Index;点数が高いほど生命予後が短い)と離床可能時間(以下離床能力)の関係を調べ,さらにPPI値を使って離床できるかできないかの参考値を検討することとした。
【方法】
研究は後方視的に実施。対象は緩和ケア病棟(16床)に入院し,2014年10月から2015年3月までの間にリハを開始した患者36名うち,転院や自宅退院となった6名,2015年7月現在もリハ継続中の2名,データ欠損例4名の計12名を除く24名とした。診療録やカンファレンス記録を基に年齢,性別,疾患名,リハ期間,患者の週毎のPPI値,その時の離床能力を調べた。PPI値と離床能力の評価頻度はリハ介入初期,死亡退院前1週から最大8週の週1回ずつとした。統計ソフトはSPSSを使用。PPI値と離床能力の相関関係をSpearmanの順位相関係数を用いて算出し,ROC曲線を用いて離床能力とPPI値の感度,特異度,ROC曲線下面積(AUC)を求め,PPI値の離床能力に関するカットオフ値を推定した。有意水準は1%未満とした。
【結果】
対象者は男性8名,女性16名と女性のほうが多かった。リハ開始時の平均年齢は76.0±10.8歳,平均FIMは64.1±25.5点,平均リハ期間は71.0±53.2日であった。24名のPPI値と離床能力について延べ148週分を収集した。離床能力とPPI値には負の相関を認め,相関係数は-0.67であった。ROC曲線にてカットオフ値を推定した結果,PPI値3.75以上で60分以上の離床が困難(感度79.2%,特異度73.8%,AUC0.82)となり,PPI値4.75以上で30分以上の離床困難(感度82.4%,特異度75.3%,AUC0.83),PPI値6.75以上で離床自体が困難(感度80%,特異度78.6%,AUC0.89)という結果であった。
【結論】
予後予測スコアであるPPI値はADL能力(PPS値)と食思,浮腫・呼吸困難感・せん妄の有無といった身体状況によって評価する予後予測スコアであり,離床の可否は身体状況により制限されることが多いため負の相関関係を示したと考える。結果より離床能力はその時のPPI値を測定することにより離床の可否もしくはどのくらい可能か予測することができ,リハを実施していく上で一つのゴール設定上の判断材料となると考えられる。