第51回日本理学療法学術大会

Presentation information

一般演題口述

日本糖尿病理学療法学会 一般演題口述
(糖尿病)03

Fri. May 27, 2016 6:20 PM - 7:20 PM 第6会場 (札幌コンベンションセンター 2階 小ホール)

座長:小山昭人(市立札幌病院 リハビリテーション科), 田仲勝一(香川大学医学部附属病院 リハビリテーション部)

[O-DM-03-4] がん患者に対する理学療法におけるQOL調査票ケアノートの効果と問題

森本貴之1,2, 高倉保幸3, 山本満1 (1.埼玉医科大学総合医療センターリハビリテーション科, 2.埼玉医科大学大学院医学研究科, 3.埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科)

Keywords:がん, ケアノート, 理学療法

【はじめに,目的】

2006年に制定されたがん対策基本法では,がん患者の療養生活の質の維持向上が基本的施策として明文化され,QOL向上を目的としたがん患者に対する理学療法(PT)が急速に推進されている。一方,がん患者の抱える機能障害・ADL障害はがん腫や進行度などにより様々であるとともに,適応障害に代表される心理的問題を抱える事が多く,がん患者に対するPTでは心理的問題とQOLを適切に評価することが重要である。心理的問題を含めたがん患者のQOL調査票としてケアノートが開発されたが,PTでの利用に関する報告は見当たらない。本研究の目的は,ケアノートをPTで使用した場合の効果や問題を明らかにすることである。


【方法】

対象は,2015年6月から10月に当院入院しPTが処方されたがん患者のうち,ケアノートを使用した患者と担当PT各78例(年齢65±14歳,男性43/女性35,肺癌35/血液癌19/その他24)とした。調査項目はケアノートの下位項目,ケアノートの使用感とした。ケアノートは,症状10項目,精神的な面6項目,生活8項目の全24項目からなり,それぞれ0-10の11件法で回答する。ケアノートの使用感は,①ケアノートで伝わりやすいもの②ケアノートの効果③ケアノートの問題④ケアノートの満足度,の4項目を患者と担当PTから無記名式アンケートで調査した。回答方法は,①-③は多肢択一方式,④は11件法とした。解析は,ケアノートの記述統計からPTを行うがん患者が抱える問題点を検討し,さらに適応障害のスクリーニングに使用される「つらさと支障の寒暖計」を参考に,ケアノートの精神的な面6項目で1つでも4点以上,かつ生活の活動性で7点以下の場合に適応障害疑い有りとした。適応障害疑いの有無を従属変数,ケアノートの症状10項目の点数を独立変数として多重ロジスティック回帰分析を行い,適応障害疑いと関連の強い症状を分析した。統計解析にはIBM SPSS ver.22を使用し有意水準は5%とした。


【結果】

PTを行うがん患者が多く抱える問題点は,症状では痛み(中央値3.0)と不眠(3.0),精神的な面では心配ごと(4.0)と不安(3.0),生活ではからだの動き(5.0)と生活の活動性(5.0)があげられた。適応障害疑いの患者は38例(50%)であり,体の消耗や痛みとの関連が強かった(モデルχ2値p<0.05,判別的中率85.3%)。アンケートの結果からは,多くの患者・PTがケアノートを使用することで問題点が伝わりやすいと感じ(患者49%・PT50%),ケアノートの満足度も高かった(中央値:患者8.0・PT7.0)が,一部の患者(13%)はケアノートの効果を感じていなかった。


【結論】

PTを行うがん患者が多く抱える問題点,適応障害と関連が強い症状が明らかとなり,今後のPTの課題が明確になった。PTにおけるケアノートの使用は患者の問題点の共有に有効なことが多いが,有効でないと感じる患者もいるためケアノートの記入は自由意志で行うべきであると示唆された。