[O-DM-03-5] 周術期消化器がん患者に対する神経筋電気刺激の効果
予備的準ランダム化比較対照試験
キーワード:がん, 神経筋電気刺激, 周術期
【はじめに,目的】
周術期消化器がん患者は活動性の低下や,術侵襲,食事制限によって身体機能が低下すると報告されており,手術後の身体機能の改善は社会復帰に際し重要な因子となる。がん治療中や治療後のリハビリテーションは身体機能を改善することが報告されているが,手術直後の患者は疼痛や安静などにより積極的な運動療法が行えないことが多い。神経筋電気刺激(NMES)は受動的に筋を収縮させるため,従来の運動療法より少ない動機づけで行うことが可能であり,術後など活動制限がある患者に対しても有効である。しかし,がん患者の外科手術後にNMESを行った治療の報告は散見される程度であり,その効果は十分に検証されていない。そのため本研究は周術期の消化器がん患者に対しNMESを実施し,身体機能に与える効果について予備的に検証することを目的とした。
【方法】
対象は腹部外科手術を受けた消化器がん患者16名とし,NMES群8名(胃がん3名,大腸がん5名,平均年齢67.8±7.6歳),対照群8名(胃がん5名,大腸がん3名,平均年齢71.8±11.5歳)にMicrosoft Excelの乱数関数を用いて割り付けた。両群ともに術前から通常理学療法を実施し,NMES群は術後翌日から2週間(5日/週)通常理学療法に併せて両大腿四頭筋へNMESを実施した。使用機器はIntelect Advanced Combo(Chattanooga社製)とし,NMESパラメータは波形 二相性対称性パルス波,周波数200Hz,パルス幅300μs,刺激強度 最大耐性強度,刺激時間10秒on/30秒offで1時間,電極は大腿神経幹上,大腿直筋,内外側広筋のモーターポイントに貼付した。通常理学療法は呼吸体操,筋力増強運動,持久力運動を実施した。評価項目は大腿四頭筋等尺性最大筋力,Timed Up and Go test,6分間歩行テストとし,術前と術後1,2週目の計3回測定した。各評価項目を二元配置分散分析で分析し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
NMES群と対照群の比較では全ての評価項目で有意な差は見られなかった。術前,術後1,2週目を比較してもNMES群と対照群ともに有意な変化は認められなかった。また,全ての評価項目において有意な交互作用は認められなかった。
【結論】
本研究の結果からは周術期消化器がん患者に対するNMESの効果はみられなかった。手術直後の患者は侵襲に伴いタンパク異化を引き起こすため,筋力増強訓練を実施しても筋のタンパク合成が行えない。そのためNMESを実施しても筋肥大を生じさせることが困難であり,対照群とNMES群の身体機能に有意な差が生じなかったと考えられる。また,NMESを使用した筋力増強効果を検証した先行研究は4~6週間介入している報告が多いが,本研究の介入期間は術後2週間であった。介入が短期間であったため,タンパク質代謝が同化に転換した期間に十分なNMESが実施できず,身体項目に有意な差が生じなかったと考えられる。今後はNMESのパラメータや対象,介入期間等を変更し,治療効果を検証したい。
周術期消化器がん患者は活動性の低下や,術侵襲,食事制限によって身体機能が低下すると報告されており,手術後の身体機能の改善は社会復帰に際し重要な因子となる。がん治療中や治療後のリハビリテーションは身体機能を改善することが報告されているが,手術直後の患者は疼痛や安静などにより積極的な運動療法が行えないことが多い。神経筋電気刺激(NMES)は受動的に筋を収縮させるため,従来の運動療法より少ない動機づけで行うことが可能であり,術後など活動制限がある患者に対しても有効である。しかし,がん患者の外科手術後にNMESを行った治療の報告は散見される程度であり,その効果は十分に検証されていない。そのため本研究は周術期の消化器がん患者に対しNMESを実施し,身体機能に与える効果について予備的に検証することを目的とした。
【方法】
対象は腹部外科手術を受けた消化器がん患者16名とし,NMES群8名(胃がん3名,大腸がん5名,平均年齢67.8±7.6歳),対照群8名(胃がん5名,大腸がん3名,平均年齢71.8±11.5歳)にMicrosoft Excelの乱数関数を用いて割り付けた。両群ともに術前から通常理学療法を実施し,NMES群は術後翌日から2週間(5日/週)通常理学療法に併せて両大腿四頭筋へNMESを実施した。使用機器はIntelect Advanced Combo(Chattanooga社製)とし,NMESパラメータは波形 二相性対称性パルス波,周波数200Hz,パルス幅300μs,刺激強度 最大耐性強度,刺激時間10秒on/30秒offで1時間,電極は大腿神経幹上,大腿直筋,内外側広筋のモーターポイントに貼付した。通常理学療法は呼吸体操,筋力増強運動,持久力運動を実施した。評価項目は大腿四頭筋等尺性最大筋力,Timed Up and Go test,6分間歩行テストとし,術前と術後1,2週目の計3回測定した。各評価項目を二元配置分散分析で分析し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
NMES群と対照群の比較では全ての評価項目で有意な差は見られなかった。術前,術後1,2週目を比較してもNMES群と対照群ともに有意な変化は認められなかった。また,全ての評価項目において有意な交互作用は認められなかった。
【結論】
本研究の結果からは周術期消化器がん患者に対するNMESの効果はみられなかった。手術直後の患者は侵襲に伴いタンパク異化を引き起こすため,筋力増強訓練を実施しても筋のタンパク合成が行えない。そのためNMESを実施しても筋肥大を生じさせることが困難であり,対照群とNMES群の身体機能に有意な差が生じなかったと考えられる。また,NMESを使用した筋力増強効果を検証した先行研究は4~6週間介入している報告が多いが,本研究の介入期間は術後2週間であった。介入が短期間であったため,タンパク質代謝が同化に転換した期間に十分なNMESが実施できず,身体項目に有意な差が生じなかったと考えられる。今後はNMESのパラメータや対象,介入期間等を変更し,治療効果を検証したい。