第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)01

Fri. May 27, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:伊藤義広(広島大学病院 診療支援部)

[O-ED-01-2] 地域包括ケア病棟入棟時の在宅復帰可能因子

大坪尚典1, 葛巻尚志1, 堤美紀1, 山元絵美1, 山田哲郎1, 上原健治2 (1.金沢市立病院リハビリテーション室, 2.金沢市立病院整形外科)

Keywords:地域包括ケア病棟, 在宅復帰, 機能的自立度評価法

【目的】

当院は,2014年10月より50床の地域包括ケア病棟(以下,ケアと略)を開設した。ケアの施設基準維持には在宅復帰率のコントロールが重要である。今回,在宅復帰に影響するケア入棟時の因子について検討した。

【方法】

対象は,2014年11月から2015年10月の期間に自宅から直接入院し,ケアを経て退院した145例,女性94例,男性51例,平均年齢±SD=79.5歳±12.2である。施設入所者と死亡退院は除外した。疾患別割合は,運動器73.8%,脳血管15.9%,呼吸器6.9%,廃用2.8%,がん0.7%だった。対象の年齢,性別,ケア入棟時のFIM合計点と各下位項目点,FIM利得,FIM効率,手術の有無,急性期在棟日数,ケア在棟日数,および介護者有無のデータについてはカルテより後方視的に入手した。なお,介護者とは「同居かつ日中に常時介護が可能な者」と定義した。これらを,ケア退院時に自宅へ復帰した群(在宅群)と復帰できなった群(非在宅群)に分類し,2群間に差があるかを検証した。差の検定は,変数に応じてMann-WhitneyのU検定とカイ2乗検定を行い,差が生じたものをロジスティック回帰分析に投入した。解析は,IBM SPSS Statistics(ver.20)を使用し,有意水準は5%未満とした。

【結果】

全体のFIM合計点中央値は,ケア入棟時91.0から退棟時112.0に改善した。在宅群は107例,非在宅群は38例となった。単変量解析により,FIM合計点と各下位項目点すべて,FIM利得,FIM効率,急性期在棟日数,ケア在棟日数,介護者有無において差を認めた。年齢,性別,手術の有無では差を認めなかった。FIM合計点,急性期在棟日数,ケア在棟日数,介護者有無を独立変数に,在宅復帰可否を従属変数とし,変数増加尤度比法によるロジスティック回帰分析に投入した結果,FIM合計点と介護者有無が選択された。モデルカイ2乗検定はp<0.01で有意であり,Hosmer-Lemeshowの検定はp=0.37で適切だった。感度91.6%,特異度50.0%,陽性的中率83.8%,陰性的中率67.9%,判別的中率80.7%を示した。ROC曲線によるFIM合計点のカットオフ値は89点で,曲線下面積は0.81を示した(p<0.01)。各群のFIM合計点中央値(最小~最大値)は,在宅群101.0点(22~126),非在宅群69.0点(18~109),介護者ありの割合は,在宅群59.8%,非在宅群31.6%だった。

【結論】

在宅復帰には,ケア入棟時のADL自立度と介護者有無が影響することが示された。矢野ら(2015)は,全体のFIM合計点が入院時79.5±30.2からケア退棟時89.8±29.8点に改善し,在宅群では移乗と移動能力が改善したと報告している。これに比較し,本研究では,ケア入棟時のFIM合計点とカットオフ値は共に高い値を示している。これは,運動器疾患の割合が特に高い事,また,運動器疾患ではケア入棟時のADLと機能的予後が共に良好な例を多く選択している事に起因している。なお,在宅群にはFIM合計点のかなり低い例も含まれているが,これらは介護力により復帰可能となったケースである。