第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)01

Fri. May 27, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:伊藤義広(広島大学病院 診療支援部)

[O-ED-01-5] 救命救急センターにおける理学療法士配置による効果

帰宅支援における有効性について

野崎惇貴, 谷内耕平, 大見朋哲 (社会医療法人財団慈泉会相澤病院救急リハビリセンター)

Keywords:救命救急センター, 職域拡大, 帰宅支援

【はじめに,目的】

当院の救命救急センター(以下ER)では1次から3次救急まで全ての患者を受け入れる北米型ER方式をとっている。2013年4月より理学療法士(以下PT)を専任としてERに配置し,主に運動器疾患を対象に外来理学療法を開始した。救急外来での理学療法の活動報告は欧米などの諸外国での報告は散見されるが,本邦においての報告はほとんど認めない。そのため日本におけるERでのPTの役割や効果について明らかにされていない。

我々は第49回の本学会においてER所属の医師・看護師に対するアンケート結果の報告を行った。その中でPTの介入による効果として,疼痛などにより生活困難な症例に対する帰宅支援が挙げられた。そこで,今回ERで実施する理学療法が帰宅支援における効果について明らかにすることを本研究の目的とした。


【方法】

対象は2014年10月から2015年9月の間に当院ERにおいて理学療法を実施した1113例のうち,医師が医学的に入院の必要がないと判断し,帰宅支援目的に介入した172例(男性76例,女性96例,平均年齢78.4±14.9歳)とした。対象を障害部位別(①頸部②上肢③背部・腰部④骨盤・股関節・大腿⑤膝関節・下腿・足関節⑥その他の6項目)に分けた。そして,PTの介入により帰宅可能となった群(以下,帰宅群),介入するも帰宅困難と判断され入院となった群(以下,入院群)の2群に分けた。PTの介入によって帰宅可能となった割合(以下,帰宅率)を調査した。


【結果】

障害部位では①5例,②7例,③116例,④17例,⑤14例,⑥13例であり障害部位として背部・腰部が一番多く,次いで骨盤・股関節・大腿,の順となった。帰宅群114例(平均年齢78.4±15.4歳),入院群58例(平均年齢78.3±15.3歳)であった。PT介入後の帰宅率は66.5%であった。


【結論】

ERで帰宅支援の対象として障害部位の結果からも体幹や下肢の疼痛により体動困難となった症例に介入することが多く認められた。そのため,ERでの理学療法は急性期の疼痛緩和や動作機能改善,再発予防を目標に徒手療法や物理療法,動作練習・指導を中心に介入した。また精神的な不安や生活環境面などの要因で帰宅困難となっている症例に対しては在宅環境や介護サービスなどの調整を提案し,必要に応じてソーシャルワーカーやケアマネージャーとの連携も図った。このようにPTの専門性を活かし,症例に応じて多角的に介入することで7割近い帰宅率の結果となった。これらからもERにおける帰宅支援においてPT介入の有効性が示唆された。

このことは不必要な入院を避けることにつながり,延いては医療費削減に繋がる可能性がありERでの業務が今後PTの職域拡大の一助にもなると推察される。

今後はより効果的な介入が行えるように入院群において入院となった要因について検討していきたい。