第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)01

Fri. May 27, 2016 2:50 PM - 3:50 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:伊藤義広(広島大学病院 診療支援部)

[O-ED-01-6] 兵庫県下の理学療法士勤務施設における自動体外式除細動器設置状況の現状と課題

山野薫1, 江藤勇斗1, 松尾慎1, 西川仁史2 (1.宝塚医療大学, 2.甲南女子大学)

Keywords:理学療法士, リスクマネジメント, 自動体外式除細動器

【目的】昨今,高齢化や疾患の重複化により,理学療法士(PT)が危険な不整脈を経験することもまれではない。自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator:AED)の設置は,救急救命の命題である。本研究は,兵庫県内の理学療法士(PT)勤務施設におけるAED設置に関する調査を行い,リスクマネジメント(RM)の基礎資料とすることを目的とした。

【方法】対象は,兵庫県理学療法士会の会員勤務施設(以下,施設)659施設とした。方法は,郵送質問紙法(無記名)とし,回答依頼は理学療法部門責任者とした。調査項目は,基礎情報,AED設置状況,研修有無,必要性,および自由記載欄の12項目とした。

【結果】返送された調査票は,298通(回収率:45.2%)であった。この内,記載不備の1通を除いた297通を分析対象とした。設立母体は,医療法人が160施設(55.9%)で最も多く,施設区分は,一般病院86施設(27.0%),介護老人保健施設56施設(17.6%)の順であった。勤務PT数は平均7.1名であった。施設内のAEDは,「あり」245施設(82.5%),「なし」50施設(16.8%)などであった。「あり」のうち理学療法室内での設置は58施設(23.7%)で,平均設置台数は1.1±0.3台であった。一方,「なし(50施設)」のうち,今後の設置予定は「計画あり」6施設(11.5%),「なし」22施設(42.3%)などであった。AED未設置の理由は「緊急時は医師が対応」,「高価」などであった。院内設置場所までの往復時間は,「1分未満」109施設(60.2%),「1~3分未満」41施設(22.6%),「3~5分未満」12施設(6.6%),「5分以上」3施設(1.7%)などであった。また,5施設(2.0%)にAEDの使用経験があった。AED使用方法の理解は214施設(87.3%)で理解を示し,AED取り扱い研修は163施設(66.5%)で研修を実施していた。PT勤務施設に「AEDは必要である」と回答した施設は,243施設(81.8%)であった。

【結論】本研究から二つの特徴が考えられた。第1は,院内AED設置場所までの往復時間で,心停止から除細動開始までの有効時間(2分以内),脳細胞死の開始時間(心停止後3分後)を基準として良好な結果(往復時間「3分以内」:82.8%)であった。AED使用の法的根拠は,「非医療従事者による自動体外除細動器(AED)の使用について(平成16年7月1日付 医政発第0701001号 厚生労働省医政局長通知)」に基づく。一般市民の使用可の時代において,PT業務(運動負荷)の安全性担保にAED配備は重要な意味を持つ。第2は,PT部門のRMの取り組みは,「AEDの使用方法を理解している」87.3%,「AEDの取り扱い研修を実施している」66.5%で,比較的高い割合を示した。しかし,医師に委ねる回答もみられ,理学療法中の一次救命処置はPTが実施するという認識向上の必要がある。理学療法のRMは,人と物の両面から構築される。理学療法部門での患者急変に備える施策の一つとして,AED設置と使用に関する平素からの対策が重要であり,本研究はその足がかりとなる。