第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)02

2016年5月27日(金) 16:00 〜 17:00 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:潮見泰藏(北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科)

[O-ED-02-3] 義足歩行分析能力の向上に向けた動画を活用した教育方法の可能性と課題

豊田輝 (帝京科学大学)

キーワード:義足歩行分析, 教育方法, 動画

【はじめに,目的】

義肢学における理学療法士養成課程の到達目標は,基本的知識である国家試験対応に限局され,臨床実践能力の修得を網羅していない。このためか,我々がアイマークレコーダーにより検討した先行研究では,義足歩行分析に必要な基本的知識を備えている者でも実際の義足歩行観察では多くの者が十分な正答を導き出すことはできなかった。また,別調査において初学者は,「義足歩行分析」を一番高い難易度と回答した。さらにこの要因は,①実際の観察経験不足,②観察時期と観察部位が不明,③歩行速度に観察がついていけない等であり,全て臨床実践能力に対する教育不足がその要因となっていることが示唆された。

そこで,義足歩行分析能力の向上に向けた動画を活用した教育方法を構築し,今後の可能性と課題について検討したので報告する。

【方法】

本教育方法について紹介する。アライメント異常による片側大腿義足異常歩行(伸び上がり,体幹側屈,歩幅の不同,過度の腰椎前彎,ホイップ,蹴り上げの不同,ぶん回し)を動画編集製作し,受講者が必要と求める回数だけ観察させた。また,観察時期と観察部位を具体的に支援するため,アイマークレコーダーによる検討で明らかとなった熟練者の観察点を基に作成した「観察手順書」を使用した。さらに,受講者には,観察された異常歩行結果からその原因と対処を記入するチェック用紙を配布,使用させた。

受講者は,事前説明で同意が確認された理学療法士4年養成課程の3年生66名とし,義肢学定期試験終了後に集合調査法にてアンケート調査を実施した。質問紙は,①義足歩行分析における理解度について,②動画について,③観察手順書について,④チェック用紙についての4因子8項目からなり5段階のリッカート尺度法と自由記載で回答を得た。

【結果】

基本的知識教示のみ時に比べ,本教育方法受講時が理解度は高い割合を示した。また,7つの異常歩行動画平均再生回数は4.3±1.2回であった。異常歩行平均再生回数が最も少ないのは,伸び上がり歩行で約3.5回,最も多いのは歩幅の不同で6.5回であった。観察手順書とチェック用紙については,約9割の者が「有効であった」と回答した。

【結論】

義足歩行分析能力には,基本的知識は基より実際の義足歩行観察から異常歩行の発見が必要不可欠である。本教育方法は,①実際の義足歩行観察経験数を確保できること,②観察手順書やチェック用紙により具体的な観察点や異常歩行発見が容易となること,等から養成課程における教育資源として活用できることが示唆された。課題としては,①異常歩行によっては,動画再生平均回数が6.5回と多いこと,②異常歩行の原因が複数存在するような条件における動画ではないこと等が挙げられる。