第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)02

Fri. May 27, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:潮見泰藏(北海道千歳リハビリテーション学院 理学療法学科)

[O-ED-02-4] 動作分析課題の導入効果に関する研究

堀本ゆかり, 久保晃, 糸数昌史 (国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科)

Keywords:動作分析, 画像解析ソフト, 導入効果

【はじめに,目的】

臨床実習における評価項目に関する意識調査では,80%を超える学生が動作分析に対して苦手意識を有していると報告されている。動作分析は多様性と不確実性を含む課題であり,十分な標準化も得られていないため,教授しにくく,学生の混乱を招きやすい。初めて動作分析課題に取り組む2年生を対象に,動作分析課題に対して苦手意識を軽減し,以降の学習につなげる目的で視覚的訴求力の高いフリー動作解析ソフト「Kinovea」を用いて,運動学実習を行った。動作解析ソフト導入効果の検証と授業内容の関心度および満足度について調査したので報告する。

【方法】

対象は本学理学療法学科2年生102名である。実習授業は180分で,1グループ8~9名が12週でローテーションして実施する。実習手順の説明後,あらかじめ提示した立ち上がり動作の動画撮影を行った後,動作解析ソフト(Kinovea社製「Kinovea」:運動軌跡等分析機能を備えたドローイングツール)の使用方法について教授し終了とした。学生には,後日分析レポートの提出を義務づけた。授業終了後,17項目からなるリッカート尺度を用いた質問紙調査を実施した。統計処理は,日本科学技術研修所製JUSE stat-works v.4.0を用い,有意水準5%で重回帰分析により分析した。

【結果】

実習内容に対して興味深く取り組めたかという設問では,67.6%が「そう思う」32.3%が「ややそう思う」と回答し,97.9%が満足できるものと捉えていた。16.7%は動作解析ソフトの操作性に難しさを感じているものの,そのうち50%は今後も利用したいと回答していた。動作解析ソフトを用いて今後分析したい動作では,80%がスポーツに関する動作と回答していた。実習授業満足度に影響を与える要因分析では,重相関係数0.765(自由度二重調整寄与率0.54)であり,動画解析ソフト利用の有効性,授業の役立ち度,内容の興味深さ・新鮮さ,授業の目的・方法の理解,実習の分量や時間が抽出された。

【結論】

動作分析は治療直結型の評価手法であり,あらゆる疾患に共通した評価技術として重要である。臨床実習での動作分析は客観的に捉えにくく,学生の苦手意識はさらに増大する。理学療法にとって中核的な評価である動作分析の導入授業として,学生の興味を喚起することは学習意欲の向上に寄与できるものと考える。今回用いた動画解析ソフトは汎用的に使用でき,解析結果の表現方法やフィードバックも容易である。本ソフトを用いた実習授業は高い肯定的回答率を示し,興味を持って取り組めることが示された。このようなソフトを利用した繰り返し学習は,講義外学習でも利用でき,観察による動作分析能力を高める手法と成り得ると考える。臨床実習の経験前の導入ツールとしては有用であり,分析眼の育成に大きく貢献できるものと考える。今後,さらに動作分析能力の定着に向け,新鮮さや興味深さを授業に取り入れる工夫を検討したい。