第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)03

2016年5月27日(金) 17:10 〜 18:10 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:平野孝行(名古屋学院大学 リハビリテーション学部理学療法学科)

[O-ED-03-1] モンゴルでの青年海外協力隊による早期理学療法導入支援の試み

Action researchによる課題解決と理学療法士教育

小泉裕一 (ガイアリハビリ訪問看護ステーション)

キーワード:青年海外協力隊, 開発途上国, Action research

【はじめに,目的】

2012年8月~2014年6月までモンゴル国ウランバートル市にある国立第三中央病院に青年海外協力隊として派遣され,PTに対して支援活動を行ってきた。モンゴルではPTの養成が2007年から開始さればかりで,認知度の低さや,現場の指導者の不足が課題として挙がっていた。支援はPTに対しての知識伝達や技術指導のみならず,Action research(AR)から現場レベルの課題を明確にし,解決策を提案する活動を行ってきた。具体的には病棟連携や,早期理学療法の実践などを,現場の調査結果をもとに行った。今回,ARを用いた脳卒中患者早期理学療法の導入,実践における一連の活動を分析し,支援の効果について検討した。

【方法】

2012年8月~2014年6月まで,カウンターパート(CP)のモンゴル人PT3名(内2名は2013年8月から)と行った,ARを主とした脳卒中患者の早期理学療法導入から実践までの活動を4期に分けて分析した。活動はまず,早期理学療法を実践する上で,CPと理学療法部門の課題を整理し,ARの計画の立案をした(第1期)。次に,診療記録の作成をし,患者データの蓄積を行った(第2期)。そして,蓄積したデータから,入院からPT開始日までの期間を分析し早期理学療法の現状と課題を明らかにした(第3期)。最後に,具体的な課題に対する解決策を考案・実践し,成果の分析を行った(第4期)。

【結果】

第1期にCPと状況分析をした結果,脳卒中患者の評価表,診療記録がないために,診療状況を把握できないことが課題として挙げられた。第2期は,脳卒中患者に関する評価表,診療記録を作成,導入し,患者データを体系的に蓄積することが可能となった(最終の導入実績は670症例:集計期間2013年1月~2014年4月)。第3期は,診療記録から早期理学療法の状況分析を行った。入院からPT開始までの平均日数が5.1±3.4日であり(集計期間2013年1月~3月),PT開始までに時間を要していることが分かった。要因として,主治医からの指示が遅いことが挙げられた。第4期は,具体的な解決策として病棟医師との連携強化が挙げられ,回診や病棟会議に積極的に参加するようになった。連携強化後は,入院からPT開始までの平均日数は2.6±2.5日(集計期間2013年10月~2014年3月)となり,第3期と比較して短縮した。

【結論】

今回,ARを用いたことで,CPに対して知識伝達や技術指導で支援が終わるのではなく,具体的な現場の課題を検討し,現実的な解決策をCPと共に実践することができた。成果指標として医師との連携強化後の入院からPT開始までの期間短縮を挙げたが,最も重要だったことは,ARを通してCPの問題解決能力が向上し,オーナーシップが醸成されたことであった。開発途上国における支援において,ARのような現場の課題を解決していく手法は,具体的な課題解決に繋がりやすく,更には,CPの問題解決能力や,オーナーシップを醸成する可能性があることが考えられた。