[O-ED-03-2] 若手療法士に対する卒後教育としてのグループ指導の効果検証
Keywords:卒後研修, グループ指導, 若手療法士
【はじめに,目的】
近年,経験年数の少ない療法士(若手療法士)が急激に増加し,逆に指導者を担う経験年数を有する療法士数(指導療法士)は相対的に減少している。卒後教育法の構築が重要視されているなか,臨床現場では少ない指導療法士が多くの若手療法士を指導する教育方法の確立が実用的かつ重要である。そこで我々は,従来から養成校教育で行われているグループ指導法に着目した。グループ指導法はこれまでも卒後教育としての取り組み報告はされているものの,体系的な効果検証は行われていない。そこで本研究では,客観的臨床能力試験(OSCE)を用いて,卒後教育におけるグループ指導の効果を検証した。
【方法】
対象者は若手療法士33名(経験年数1-3年目),指導療法士は4名(経験年数4-10年目)とした。グループ指導前後で4項目のOSCEを実施した。OSCEは市販の書籍(PT・OTのためのOSCE臨床力が身につく実践テキスト)に準じて,足関節背屈の関節可動域(以下,ROM),肩関節屈曲の徒手筋力検査(以下,MMT),下肢形態計測(以下,下肢長),移乗動作の補助・誘導(以下,移乗)とした。採点は指導療法士とは別の評価者2名(経験年数6-10年目)によって,各項目の細項目それぞれ0点から2点の3段階で評価した。グループ指導は,指導療法士1名と若手療法士8-9名で実施した。指導内容は若手療法士のOSCE減点項目を中心とした実技指導とした。具体的には,指導療法士が若手療法士に対してOSCE減点項目をフィードバックし,修正ポイントを交えた実演と実技指導を行った。指導は各項目1時間を週1回,計4回実施した。対象者間で指導時間や指導回数は統一した。データは4項目それぞれの総合点から百分率で算出した。統計学的分析は対応のあるT検定を用い,有意水準は0.05未満とした。
【結果】
指導前後でROMは74.3±14.1%から84.6±8.5%,MMTは80.4±17.5%から90.9±14.8%,下肢長は66.0±12.8%から72.5±9.8%,移乗は76.5±15.8%から88.7±10.8%であった。全項目において指導前後で有意に向上した。
【結論】
グループ指導によって全項目の得点が向上した。これはグループ指導が卒後教育に有用である可能性を示唆している。本研究ではOSCEを用いて客観的に臨床能力を評価した。OSCEは卒後療法士の臨床能力評価指標としても信頼性が認められている評価である。したがって本研究は,グループ指導の有用性が客観的に示されたと考えている。しかしOSCEを用いた指導および教育は,臨床能力基盤の底上げには強く寄与すると考えるものの,より専門性を高めるという点においては,新たな評価指標の開発が必要と考えられる。したがって本研究は,卒後教育におけるグループ指導が若手療法士の臨床能力基盤の底上げに有用である事を示し,臨床現場における実用的な教育方法である事を示した点において,理学療法の発展に寄与すると考えている。
近年,経験年数の少ない療法士(若手療法士)が急激に増加し,逆に指導者を担う経験年数を有する療法士数(指導療法士)は相対的に減少している。卒後教育法の構築が重要視されているなか,臨床現場では少ない指導療法士が多くの若手療法士を指導する教育方法の確立が実用的かつ重要である。そこで我々は,従来から養成校教育で行われているグループ指導法に着目した。グループ指導法はこれまでも卒後教育としての取り組み報告はされているものの,体系的な効果検証は行われていない。そこで本研究では,客観的臨床能力試験(OSCE)を用いて,卒後教育におけるグループ指導の効果を検証した。
【方法】
対象者は若手療法士33名(経験年数1-3年目),指導療法士は4名(経験年数4-10年目)とした。グループ指導前後で4項目のOSCEを実施した。OSCEは市販の書籍(PT・OTのためのOSCE臨床力が身につく実践テキスト)に準じて,足関節背屈の関節可動域(以下,ROM),肩関節屈曲の徒手筋力検査(以下,MMT),下肢形態計測(以下,下肢長),移乗動作の補助・誘導(以下,移乗)とした。採点は指導療法士とは別の評価者2名(経験年数6-10年目)によって,各項目の細項目それぞれ0点から2点の3段階で評価した。グループ指導は,指導療法士1名と若手療法士8-9名で実施した。指導内容は若手療法士のOSCE減点項目を中心とした実技指導とした。具体的には,指導療法士が若手療法士に対してOSCE減点項目をフィードバックし,修正ポイントを交えた実演と実技指導を行った。指導は各項目1時間を週1回,計4回実施した。対象者間で指導時間や指導回数は統一した。データは4項目それぞれの総合点から百分率で算出した。統計学的分析は対応のあるT検定を用い,有意水準は0.05未満とした。
【結果】
指導前後でROMは74.3±14.1%から84.6±8.5%,MMTは80.4±17.5%から90.9±14.8%,下肢長は66.0±12.8%から72.5±9.8%,移乗は76.5±15.8%から88.7±10.8%であった。全項目において指導前後で有意に向上した。
【結論】
グループ指導によって全項目の得点が向上した。これはグループ指導が卒後教育に有用である可能性を示唆している。本研究ではOSCEを用いて客観的に臨床能力を評価した。OSCEは卒後療法士の臨床能力評価指標としても信頼性が認められている評価である。したがって本研究は,グループ指導の有用性が客観的に示されたと考えている。しかしOSCEを用いた指導および教育は,臨床能力基盤の底上げには強く寄与すると考えるものの,より専門性を高めるという点においては,新たな評価指標の開発が必要と考えられる。したがって本研究は,卒後教育におけるグループ指導が若手療法士の臨床能力基盤の底上げに有用である事を示し,臨床現場における実用的な教育方法である事を示した点において,理学療法の発展に寄与すると考えている。