第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)03

Fri. May 27, 2016 5:10 PM - 6:10 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:平野孝行(名古屋学院大学 リハビリテーション学部理学療法学科)

[O-ED-03-5] がん患者の理学療法に必要な知識・技能の学習

國澤洋介1,2, 高倉保幸1,2, 武井圭一2, 大熊克信3, 大隈統4, 森本貴之2, 髙野敬士2, 小林大祐2, 小関要作1, 師岡祐輔1,2, 三本木光2 (1.埼玉医科大学保健医療学部理学療法学科, 2.埼玉医科大学総合医療センター, 3.さいたま市民医療センター, 4.武蔵台病院)

Keywords:がん, 理学療法, 教育

【はじめに,目的】「がん患者リハビリテーション料」の新設(2010年)を受け,施設基準に係る研修会が全国各地で開催されている。また,日本理学療法士学会は「がん理学療法部門」を設立(2015年)し,がん患者に関わる理学療法士の増加と理学療法(PT)の質の向上に対応すべく準備を始めた。しかし,これまでの調査で,がん患者へ対応するための知識・技能が不十分であること,卒前・卒後教育が整備されていないことが明らかとなっている。このような現状を踏まえ,2011年度から「がんの理学療法」講習会(日本理学療法士協会主催)を開催し,のべ196名(全5回)の参加を得た。本報告は,講習会内容と参加者の意見を振り返り,がん患者のPTに必要となる知識・技能を再確認し,卒前・卒後教育に役立てることを目的とした。


【方法】対象は2015年度の「がんの理学療法」講習会に参加した39名とした。講習内容は,①がんの基礎知識,②目標設定,③コミュニケーション・スキル,有害事象(④周術期,⑤骨転移,⑥低体力)の評価と対応,⑦苦痛の7セッションとし,各セッションは講義およびスモール・グループ・ディスカッション(SGD),ロール・プレイ(RP)で構成した。SGDおよびRPでは,事前に学習を積んだファシリテーターを各グループに配置し,よりスムーズな学習が図れるよう配慮した。なお,参加者の学習状況と意見の集約には,受講前後の確認テスト(20問)とアンケート調査を用いた。アンケートの調査項目は,職種およびがん患者の経験年数に加え,セッションごとのニーズとの適合,難易度の適正,満足度について1から6の6段階で回答を得た(点数が高いほど良好)。


【結果】確認テストの中央値(25%-75%値)は,受講前12(9.5-14)点,受講後16(15-17.5)点となった。アンケートの回収率は97%(38/39例)であり,職種の経験年数の中央値(25%-75%値)は7(5-11)年,がん患者の経験年数は10(1-4)年であった。各設問の中央値は,ニーズとの適合で5,6,5,6,5,5,6(セッション①から⑦の順),難易度の適正で5,5,5,5,5,5,5,満足度で5.5,5,5,5,5,5,6となり,経験年数との関連を認めなかった。


【結論】施設基準に係る研修会は,多職種を対象とした学習内容が主体であることや病院職員を対象としていることから,がん患者のPTに必要なより専門的な知識・技能の習得には不十分となる可能性があること,在宅や教育の現場に反映しにくいことが懸念されている。今回の結果から,本講習会内容はニーズとの適合,難易度の適正,満足度ともに良好であり,がん患者の経験に関わらず,専門職として習得すべき内容を取り入れていたことが確認された。また,SGDやRPを多く取り入れた学習方法は,知識・技能の習得に好影響であったと考えられた。今後は,より専門的な内容,事例検討など,より実践的な学習について整備していくことが重要であると考えられた。