第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)05

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:酒井吉仁(富山医療福祉専門学校 理学療法学科)

[O-ED-05-1] 臨床実習の成果に関する学生への意識調査

甲田宗嗣, 上川紀道, 伊藤祥史, 平岩和美, 馬屋原康高, 沖本優明, 大塚彰, 富樫誠二 (広島都市学園大学健康科学部リハビリテーション学科)

キーワード:臨床実習, 理学療法教育, アンケート

【目的】臨床実習に関する学生への意識調査は,満足度,ストレスや不安,性格・気質特性について検討したものが多いが,成果についての報告はほとんど見当たらない。本研究の目的は,臨床実習終了後の学生が何にどの程度成果を感じているか明らかにすることである。

【方法】対象は,全ての臨床実習を終了した専門学校最終学年の学生34名であった。成果に関する意識調査は,無記名アンケートにて実施した。内容は,臨床実習全体の成果と具体的成果11項目を5段階リッカート尺度で質問した。具体的成果は介入の知識,介入の技術,評価の知識,評価の技術,医学的知識,レポート等の作成スキル,マナー,患者との人間関係,指導者との人間関係,理学療法士志向,実習施設への就職希望とした。リッカート尺度の選択肢は,とても思う,どちらかといえば思う,どちらでもない,あまり思わない,ほとんど思わないとした。また,自由記述にて,最も成果があったこと1つと,成果が上がらず最も悔やまれること1つを質問した。

分析は,臨床実習全体の成果の大小で2群に分け,具体的成果11項目の群間比較をウィルコクソンの順位和検定にて分析した。統計解析はR 3.2.2 for Macを用い,有意水準は1%とした。自由記述は,質的分析によりカテゴリー化,ラベル付けして,各群の特徴を検討した。

【結果】臨床実習全体の成果は,とても思うが24名(成果大群),どちらかと思うが10名(成果中群),他の選択肢は0名であった。具体的成果の群間比較で有意差が認められた項目は,介入の知識(effect size:r=0.52),介入の技術(0.48),評価の知識(0.61),評価の技術(0.45),理学療法士志向(0.52),実習施設への就職希望(0.55)であった。一方,医学的知識(0.26),レポート等の作成スキル(0.14),マナー(0.23),患者との人間関係(0.33),指導者との人間関係(0.35)では群間差は認められなかった。最も成果があったことの各群の特徴は,成果大群は,トップダウン式の評価ができるようになったが29%,学校での勉強との関連を実感できたが17%と多く,成果中群は,コミュニケーションを含めた患者との接し方に慣れたが60%,評価や治療を経験できたが20%であった。成果が上がらず最も悔やまれることは,各群の特徴を認めなかった。

【結語】成果大群では,介入や評価の知識と技術が身についたと認識しており,理学療法業務の根幹で成果を感じていることが示された。また,理学療法士志向と実習施設への就職希望が高値であり,これらは成果を実感した結果として高まった可能性が示唆された。成果中群における自由記載の成果内容は,患者との接し方に慣れたが60%を占めており,理学療法業務の根幹について成果を感じるまでには至っていないことが明らかとなった。