第51回日本理学療法学術大会

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一般演題口述

日本理学療法教育学会 一般演題口述
(教育)05

Sat. May 28, 2016 4:00 PM - 5:00 PM 第9会場 (札幌コンベンションセンター 2階 207)

座長:酒井吉仁(富山医療福祉専門学校 理学療法学科)

[O-ED-05-4] 学生行動変容に向けた臨床実践型指導の取り組み効果に関する報告

村上康拓, 及川龍彦, 長野由紀江, 戸来幸恵 (岩手リハビリテーション学院)

Keywords:学内教育, 教育方法, 行動変容

【はじめに,目的】

近年の理学療法学生の傾向では学力や社会適応力の継続的な低下が認められるが,一方で職域の拡大や理学療法士の資質向上が叫ばれ,養成校には医療人として十分な倫理感を身につけた育成が求められている。このことから,本学では平成19年度に学内教育の方針転換に着手,その内容は,目標意識の明確化や姿勢を早くから身につける1年次早期実習,この経験を土台に病期に沿った一連の流れとしてイメージする臨床実践型指導である。今回,平成26年度に導入した臨床実践型指導を経験した対象が臨床実習を終えたことにより良好な結果が得られた事からその教育効果を明らかにする。



【方法】

対象は臨床実践型指導を導入した平成25年度入学生(以下,25年度生)42名(平均年齢20.9±0.73)と導入前に入学した平成24年度生(以下,24年度生)37名(平均年齢21.0±1.77),年次学業成績(以下,成績)と臨床実習総合評定(以下,実習評定)について比較した。実習評定はA~Dの判定を数値に変換し,臨床実習全ての積算値とした。併せて25年度生については経済産業省が奨励する社会人基礎力検定(以下,検定)を用い,前に踏み出す力(以下,踏み出す力),考え抜く力,チームで働く力,ストレスコントロール力の4項目各4点とその合計を臨床実習前後で比較した。統計学的分析にはRver2.8.1を用いた。



【結果】

1年次成績は24年度生76.5±5.15点,25年度生78.4±5.51点,2年次で24年度生72.1±5.97点,25年度生73.5±5.4点と25年度生が高かった。実習評定は24年度生でA(4)判定8名B(3)判定20名C(2)判定38名D(1)判定8名,25年度生はA(4)判定10名B(3)判定37名C(2)判定34名D(1)判定1名と25年度生で有意に高かった(p<0.05)。検定は踏み出す力で実習前1.5±0.81点に対し実習後で2.0±0.96点,ストレスコントロール力で実習前2.4±0.67点,実習後2.7±0.55点,合計点でも実習前8.1±1.75点,実習後9.0±1.6点といずれも実習後で有意に高かった(p<0.05)。



【結論】

実習評定結果から臨床実践型指導は臨床実習に一定の効果が期待される事が示唆された。これらは学内学習による認知領域の向上により身につけた基礎知識を応用しながら障害像の把握をすることで,評価や治療等精神運動領域のスムーズな連携に資する問題解決力が養われたものと考えられる。

また,検定の踏み出す力とストレスコントロール力は情意領域の側面が関与していることから,学内教育を土台に実際の実習環境において自発的行動力の必要性自覚や環境適応力が高まることで行動変容に結び付いたものと考えられる。一方で,これは学内教育の指導形態や環境がこの点への効果的な介入を困難とすることも示唆され,今後の学内教育のあり方に対する課題とされる。

以上の事から,今回の本学の試みは臨床イメージを構築することによる学業と臨床行動の連携に一助を示していることが示唆された。