[O-HT-01-2] 慢性血栓塞栓性肺高血圧症患者における運動時心拍出量の変化と呼気ガス分析による各種パラメータとの関連性
キーワード:肺高血圧症, 心拍出量, 心肺運動負荷試験
【はじめに,目的】
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者では,肺血管の血栓閉塞により,運動時,肺血管抵抗の上昇や,心拍出量の増加不足をきたすことが知られているが,運動中の心拍出量を測定することは難しい。一方で,呼気ガス分析により算出する酸素脈(O2 pulse)値は1回拍出量を,呼気終末二酸化炭素分圧(PETCO2)や二酸化炭素換気当量(VE/VCO2)値は肺血流量(=心拍出量)を反映するとされている。今回,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者における運動時の心拍出量の変化を測定し,PETCO2やVE/VCO2,O2 pulse値との関連性を検討した。
【方法】
対象は2011年2月から2015年8月においてカテーテル治療により循環動態が安定し,Swan-Ganzカテーテル挿入下で心肺運動負荷試験(S-G CPX)が可能であったCTEPH患者69名(女性51名,平均年齢59.5±12.5歳,平均肺動脈圧20.8±4.5mmHg)。Swan-Ganz挿入下で半座位エルゴメータ機器を用いて,5Wattsの定常負荷2分後に5Watts/minの漸増負荷を症候性に最大負荷まで実施し,循環応答(心拍出量,心拍数,平均肺動脈圧)を測定,心拍出量と心拍数の商により1回心拍出量を算出した。また,呼気ガス分析により,min VE/VCO2,max PETCO2,peak O2 pulseを算出した。統計処理はPearsonの順位相関係数を用いた。全ての統計学的解析はSPSS(Inc IL,USA)を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
peak VO2/Wは14.8±4.3ml/min/kg(52.5±32.1Watts)であり,平均肺動脈圧は42.0±8.1mmHgまで上昇を認めた。安静時から運動peak時における心拍出量の変化は4.1±1.0から6.2±1.8L/min(+54.9%)であり,心拍数は68.1±9.5から113.8±19.7bpm(+68.5%)であったが,1回心拍出量は61.0±14.8から57.9±33.3ml/min(-4.2%)とやや低下した。
また,min VE/VCO2は34.6±5.0L,max PETCO2は36.8±3.9mmHgであり,各時点での心拍出量との弱い相関関係を認めた(r=-0.40,p<0.05,r=0.34,p<0.05)。peak時のO2 pulseは7.4±2.3mlであり,peak 1回拍出量と弱い相関関係を認めた(r=0.34,p<0.05)。
【結論】
治療により病態が安定したCTEPH患者において,運動時の心拍出量の増加は不十分であり,peak時の1回拍出量は安静時に比べ低下していた。また,呼気ガス分析におけるminVE/VCO2とmax PETCO2値は心拍出量と,peak時のO2 pulseは1回心拍出量に関連する可能性が示唆された。これらの指標から,運動中の心拍出量や1回心拍出量を予測することにより,運動療法の安全性を高めることができると考えられた。
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者では,肺血管の血栓閉塞により,運動時,肺血管抵抗の上昇や,心拍出量の増加不足をきたすことが知られているが,運動中の心拍出量を測定することは難しい。一方で,呼気ガス分析により算出する酸素脈(O2 pulse)値は1回拍出量を,呼気終末二酸化炭素分圧(PETCO2)や二酸化炭素換気当量(VE/VCO2)値は肺血流量(=心拍出量)を反映するとされている。今回,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者における運動時の心拍出量の変化を測定し,PETCO2やVE/VCO2,O2 pulse値との関連性を検討した。
【方法】
対象は2011年2月から2015年8月においてカテーテル治療により循環動態が安定し,Swan-Ganzカテーテル挿入下で心肺運動負荷試験(S-G CPX)が可能であったCTEPH患者69名(女性51名,平均年齢59.5±12.5歳,平均肺動脈圧20.8±4.5mmHg)。Swan-Ganz挿入下で半座位エルゴメータ機器を用いて,5Wattsの定常負荷2分後に5Watts/minの漸増負荷を症候性に最大負荷まで実施し,循環応答(心拍出量,心拍数,平均肺動脈圧)を測定,心拍出量と心拍数の商により1回心拍出量を算出した。また,呼気ガス分析により,min VE/VCO2,max PETCO2,peak O2 pulseを算出した。統計処理はPearsonの順位相関係数を用いた。全ての統計学的解析はSPSS(Inc IL,USA)を用い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
peak VO2/Wは14.8±4.3ml/min/kg(52.5±32.1Watts)であり,平均肺動脈圧は42.0±8.1mmHgまで上昇を認めた。安静時から運動peak時における心拍出量の変化は4.1±1.0から6.2±1.8L/min(+54.9%)であり,心拍数は68.1±9.5から113.8±19.7bpm(+68.5%)であったが,1回心拍出量は61.0±14.8から57.9±33.3ml/min(-4.2%)とやや低下した。
また,min VE/VCO2は34.6±5.0L,max PETCO2は36.8±3.9mmHgであり,各時点での心拍出量との弱い相関関係を認めた(r=-0.40,p<0.05,r=0.34,p<0.05)。peak時のO2 pulseは7.4±2.3mlであり,peak 1回拍出量と弱い相関関係を認めた(r=0.34,p<0.05)。
【結論】
治療により病態が安定したCTEPH患者において,運動時の心拍出量の増加は不十分であり,peak時の1回拍出量は安静時に比べ低下していた。また,呼気ガス分析におけるminVE/VCO2とmax PETCO2値は心拍出量と,peak時のO2 pulseは1回心拍出量に関連する可能性が示唆された。これらの指標から,運動中の心拍出量や1回心拍出量を予測することにより,運動療法の安全性を高めることができると考えられた。