[O-HT-01-3] 腹部大動脈瘤開腹術患者の術前セルフエフィカシーは術後離床遅延を予測する
キーワード:腹部大動脈瘤, 早期離床, セルフエフィカシー
【はじめに,目的】
腹部大動脈瘤(以下AAA)周術期におけるリハビリテーション(以下リハ)の目的のひとつに,廃用による身体機能低下の予防があり,早期離床をはじめとしたリハ介入が実施されている。AAA術後の早期離床あるいは遅延を予測することは,介入プロトコル決定においても重要と考えられる。先行研究では,定期的な運動習慣が術後早期離床に関連するとの報告があるが,身体機能や精神心理機能との関連を報告した研究はない。また,患者のQOLに関連する因子として身体活動セルフエフィカシー(SEPA)があり,身体機能や精神心理機能との関連も報告されているが,術後早期離床との関連は明らかではない。そこで本研究の目的は,AAA患者の術後離床遅延と術前の身体・精神心理機能・SEPAとの関連を明らかにすることとした。
【方法】
2014年4月から2015年10月までに当院でAAA待機開腹手術を行い,術前にリハ評価が可能であった58例を対象とした。術後歩行不可能例,下肢バイパス合併術例は除外した。診療録より患者背景,手術情報,術後合併症発生率,術前身体・精神心理機能を後方視的に調査した。術前身体機能は握力,等尺性膝伸展筋力,6分間歩行距離(6MWD),10m努力歩行速度,Modified-Functional Reach Test(M-FRT),片脚立位時間を,精神心理機能はHospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を用いて不安・抑鬱状態を評価した。SEPAは先行研究で用いられた自記式の質問紙を用い,歩行,階段昇り,重量物挙上,腕立て伏せ,下肢活動,上肢活動,総合の7項目を評価した。対象者を術後歩行自立までの日数の中央値で2日以内の早期群(n=28)と3日以上の遅延群(n=30)の2群に分け,術後離床遅延に関する臨床的特徴を比較検討した。統計学的解析は,SPSS ver.22を使用し,2群間の比較にMann-WhitneyのU検定およびχ2検定を用いた。さらに離床遅延の予測因子を,ステップワイズ法によるロジスティック回帰分析で検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
全対象例の平均年齢は69.6才,男性51例,女性7例であった。年齢・性別などの患者背景,手術情報,術後合併症発生率,HADSは両群間で差を認めなかった。遅延群では定期的な運動習慣のある者が有意に少なく(P<0.01),6MWD,M-FRTが有意に短く(各P=0.01),10m努力歩行速度が有意に遅かった(P=0.04)。SEPAは7項目すべてが遅延群で有意に低かった(P<0.01)。ロジスティック回帰分析では,SEPAが術後離床遅延の独立した予測因子(オッズ比1.03,95% CI 1.01-1.05,P<0.01)であった。
【結論】
術前SEPAは,AAA開腹術患者の術後離床遅延の独立した予測因子である。
腹部大動脈瘤(以下AAA)周術期におけるリハビリテーション(以下リハ)の目的のひとつに,廃用による身体機能低下の予防があり,早期離床をはじめとしたリハ介入が実施されている。AAA術後の早期離床あるいは遅延を予測することは,介入プロトコル決定においても重要と考えられる。先行研究では,定期的な運動習慣が術後早期離床に関連するとの報告があるが,身体機能や精神心理機能との関連を報告した研究はない。また,患者のQOLに関連する因子として身体活動セルフエフィカシー(SEPA)があり,身体機能や精神心理機能との関連も報告されているが,術後早期離床との関連は明らかではない。そこで本研究の目的は,AAA患者の術後離床遅延と術前の身体・精神心理機能・SEPAとの関連を明らかにすることとした。
【方法】
2014年4月から2015年10月までに当院でAAA待機開腹手術を行い,術前にリハ評価が可能であった58例を対象とした。術後歩行不可能例,下肢バイパス合併術例は除外した。診療録より患者背景,手術情報,術後合併症発生率,術前身体・精神心理機能を後方視的に調査した。術前身体機能は握力,等尺性膝伸展筋力,6分間歩行距離(6MWD),10m努力歩行速度,Modified-Functional Reach Test(M-FRT),片脚立位時間を,精神心理機能はHospital Anxiety and Depression Scale(HADS)を用いて不安・抑鬱状態を評価した。SEPAは先行研究で用いられた自記式の質問紙を用い,歩行,階段昇り,重量物挙上,腕立て伏せ,下肢活動,上肢活動,総合の7項目を評価した。対象者を術後歩行自立までの日数の中央値で2日以内の早期群(n=28)と3日以上の遅延群(n=30)の2群に分け,術後離床遅延に関する臨床的特徴を比較検討した。統計学的解析は,SPSS ver.22を使用し,2群間の比較にMann-WhitneyのU検定およびχ2検定を用いた。さらに離床遅延の予測因子を,ステップワイズ法によるロジスティック回帰分析で検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】
全対象例の平均年齢は69.6才,男性51例,女性7例であった。年齢・性別などの患者背景,手術情報,術後合併症発生率,HADSは両群間で差を認めなかった。遅延群では定期的な運動習慣のある者が有意に少なく(P<0.01),6MWD,M-FRTが有意に短く(各P=0.01),10m努力歩行速度が有意に遅かった(P=0.04)。SEPAは7項目すべてが遅延群で有意に低かった(P<0.01)。ロジスティック回帰分析では,SEPAが術後離床遅延の独立した予測因子(オッズ比1.03,95% CI 1.01-1.05,P<0.01)であった。
【結論】
術前SEPAは,AAA開腹術患者の術後離床遅延の独立した予測因子である。