[O-HT-01-4] 待機的心臓手術患者において術前身体活動は術後せん妄を予測する
Keywords:術後せん妄, 身体活動, Life Space Assessment
【はじめに,目的】心臓手術後せん妄の発生率は10~28%と報告されており,高頻度で起こる合併症である。術後せん妄による弊害として,死亡率の増加や身体機能,認知機能の長期的な悪化が報告されている。一方,周術期における多面的予防介入でせん妄発生頻度は低下すると報告もある。以上より,術後せん妄のリスク因子を術前から把握することは重要であると考えられる。先行研究では,せん妄の術前リスク因子として,加齢,腎機能障害そして低栄養等が報告されている。しかし,術前の身体活動と術後せん妄の関係についての報告は極めて少ない。そこで,本研究の目的は術前の身体活動と術後せん妄との関係について明らかにすることである。
【方法】対象は,2013年11月から2015年3月までに当院心臓血管外科にて人工心肺を用いた待機的開心術を受け,かつ術前評価を実施した連続患者144名である。せん妄の発生率の調査にはIntensive Care Delirium Screening Checklist(ICDSC)を用い,術後5日間,8時間ごとに調査した。ICDSCの評価のうち,一度でも4点以上の点数が付いたものをせん妄あり,全ての評価で3点以下のものをせん妄なしと評価し,せん妄発症の有無により,2群に分け,比較検討を行った。術前の身体活動の指標としてはLife Space Assessment(LSA)を用い,術前1ヶ月の身体活動を調査した。その他,術前および周術期の臨床的患者背景因子は,診療記録より調査した。統計学的解析方法として,群間比較にはt検定,カイ2乗検定を実施し,さらに群間比較で有意であった項目を説明変数,せん妄の発生を目的変数とするロジスティック回帰分析を実施した。また,有意であった項目に関してはROC曲線を作成し,カットオフ値を算出した。有意水準は5%未満とした。
【結果】せん妄の発生率は9.7%(144名中14名)であった。年齢,Bod Mass Index,性別,左室駆出率,脳性ナトリウム利尿ペプチド,併存疾患,EuroscoreII,術式,手術時間,麻酔時間,大動脈遮断時間には有意差を認めなかった。せん妄なし群と比較し,せん妄あり群のLSAは有意に低値を示した(82.5±35.7 vs. 55.3±29.4;p=0.01)。術前ヘモグロビン値,推定糸球体濾過量はせん妄なし群に比してせん妄あり群で低値を示した(p<0.05)。また術後集中治療室在室日数はせん妄なし群に比してせん妄あり群で有意に遅延していた(p=0.01)。せん妄を目的変数とする多重ロジスティック回帰分析の結果,LSAのみが抽出された(オッズ比0.98;p=0.04)。術後せん妄を予測するLSAのカットオフ値は84であった(AUC;0.82,感度90%,特異度63%,p=0.002)。
【結論】術前の身体活動低値,生活空間の狭小化は心臓手術後せん妄発症の独立した危険因子であることが示された。術前身体活動の把握並びに増大は,術後せん妄発症の予防やリスクの層別化に有用である。
【方法】対象は,2013年11月から2015年3月までに当院心臓血管外科にて人工心肺を用いた待機的開心術を受け,かつ術前評価を実施した連続患者144名である。せん妄の発生率の調査にはIntensive Care Delirium Screening Checklist(ICDSC)を用い,術後5日間,8時間ごとに調査した。ICDSCの評価のうち,一度でも4点以上の点数が付いたものをせん妄あり,全ての評価で3点以下のものをせん妄なしと評価し,せん妄発症の有無により,2群に分け,比較検討を行った。術前の身体活動の指標としてはLife Space Assessment(LSA)を用い,術前1ヶ月の身体活動を調査した。その他,術前および周術期の臨床的患者背景因子は,診療記録より調査した。統計学的解析方法として,群間比較にはt検定,カイ2乗検定を実施し,さらに群間比較で有意であった項目を説明変数,せん妄の発生を目的変数とするロジスティック回帰分析を実施した。また,有意であった項目に関してはROC曲線を作成し,カットオフ値を算出した。有意水準は5%未満とした。
【結果】せん妄の発生率は9.7%(144名中14名)であった。年齢,Bod Mass Index,性別,左室駆出率,脳性ナトリウム利尿ペプチド,併存疾患,EuroscoreII,術式,手術時間,麻酔時間,大動脈遮断時間には有意差を認めなかった。せん妄なし群と比較し,せん妄あり群のLSAは有意に低値を示した(82.5±35.7 vs. 55.3±29.4;p=0.01)。術前ヘモグロビン値,推定糸球体濾過量はせん妄なし群に比してせん妄あり群で低値を示した(p<0.05)。また術後集中治療室在室日数はせん妄なし群に比してせん妄あり群で有意に遅延していた(p=0.01)。せん妄を目的変数とする多重ロジスティック回帰分析の結果,LSAのみが抽出された(オッズ比0.98;p=0.04)。術後せん妄を予測するLSAのカットオフ値は84であった(AUC;0.82,感度90%,特異度63%,p=0.002)。
【結論】術前の身体活動低値,生活空間の狭小化は心臓手術後せん妄発症の独立した危険因子であることが示された。術前身体活動の把握並びに増大は,術後せん妄発症の予防やリスクの層別化に有用である。